【第59話】売上を創る顧客ターゲッティングの秘訣
事業経営において売上をもたらすのはお客様です。ですから、どんなお客様のために働くのかをしっかりと分かっているかどうかは、売上を創り出すための生命線といえます。
それが出来ている企業はしっかりと儲けています。自社のお客様についてはっきりとお話される企業であれば、決算書など拝見するまでもなく、大方の経営数字は推察できます。
ところが、多くの企業で「誰のために働いているか」が分かっていません。こんなお客様にも、あんなお客様にも、更にそんなお客様にも。。。といった事業計画を拝見する度に、「優先順位を考えてください。この商品を最も喜んでくれるのは誰ですか。」とお伝えしています。
売れないのでどんどん広げて。。。そして浅くなって。。。で事業をやっていくと、いつまでたっても深く強くなりません。自社の中核的な能力が育っていかないのです。新しいお客様探しには一旦の終止符を打ち、まずは自社の使命について最定義することから始めなければなりません。
分かっていないというと怒られそうなので補足しますと、ここでいうお客様とは、待っていたら偶然来たお客様ではなくて、「あなたのための商品です」といって売っていけるかどうか、この「あなた」になるお客様像ということです。
足りている時代。。。必要なモノは大抵揃っているので、「必要(ニーズ)」を埋める商品販売は難しくなっています。その先にある「欲求(ウォンツ)」を見据えなければなりません。
教科書では良く“絞れ”と言います。ですが、多くの企業でこの絞り方を間違います。
どんどん絞っていくと最終的には一人の顧客に行きあたります。この顧客を「ペルソナ」と呼んだりしますが、ここでも多くの企業が間違います。大抵の場合、間違い方はこんな感じです。
「弊社の新商品は「大手町で働き世田谷に住み、仕事帰りにデパ地下で惣菜を買って帰り、ワインで中食を楽しむ35歳から45歳、高収入で高学歴な女性」をターゲットとしております。よってデパ地下の惣菜コーナーで販売します。」といった感じです。
これは日常生活の行動パターンであって、顧客像ではありません。販売チャネルの説明にはなっていますが、顧客が“買う理由”については説明できていないのです。
なぜこういった間違い方になるのかというと、目に見える部分に思考が寄りすぎているからです。いわゆるデモグラフィックな基準に寄りすぎると、イマドキな顧客ターゲッティングとしては不十分です。
こういった目に見える部分でしか自社の顧客像を説明できないとすると、販売を促進するのは難しいと言わざるを得ません。
「欲しい」とは感情です。なぜその顧客がこの商品を「欲しい」と考えるのかが顧客設定であって、その想定している顧客像がそう考えるに至るであろう部分についての準備こそ、事業を成功させる計画の要なのです。
行動様式が似ていたとしても、同じ様な考え方や価値観を持っているとは限りません。ですから、顧客ターゲッティングでは価値観や嗜好性といったサイコグラフィックな基準に寄せることが大切です。
「欲しい」が分かっていれば、年齢や性別、どういった職業か、どんなところに住んでいるかといったことは、販売にはあまり必要ありません。
自社の製品・商品・サービスの販売拡大を考える場合、最初にその製品・商品・サービスがどういった「欲しい」に応えていけるのかを考えることになります。
実はこの「欲しい」を考えていく過程こそが、実務的には顧客ターゲティングになります。何も市場全体をセグメンテーションする必要はありません。買わない人を整理しても意味が無いのですから。
顧客ターゲッティングにおいて正しい“絞る”とは、性別、年齢、地域といった事よりもむしろ、自社がお応えできる「欲しい」についての事なのです。
御社が応える「あなた」は誰ですか?
御社がお応えする「欲しい」は絞られていますか?