【第547話】このままじゃヤバい…もポジティブ思考である。
「日本は人口も減っていくし、今のうちに次の柱となるような打ち手を準備したい」と社長。
こうした際、必ずお伝えしていることがあります。それは、「どんな商売でも採算に乗せることはできる。よって、今のビジネスの未来を悲観する必要はない。ただし、その中身は昔より高度であることが求められる」ということです。
世の中は常に高度化する方向に流れています。これは、ある意味、人類の進歩発展であり、素晴らしいことといえます。
こうした変化を前提とすれば、次に生まれてくるビジネスは過去のものよりももっと効率的に生まれてこなければ生き残れないことを意味します。
ここで高度化ということの二つの側面を整理していきましょう。
まず、経営変革の視点から高度化といえば、主に機械化を意味してきました。これは人間がやってきた作業を機械に置き換えることで省力化、自働化するということです。
こうした高度化の指導を行っていたのが能率技師と呼ばれる方々で、経営コンサルタントの原点といわれています。
この恩恵によって、多くの製品はコスト効率的に製造できるようになり、価格も下がり世の中への製品普及を果たしてきました。
また、こうした機械化というのは、人間を作業から解放し、もっと高度な仕事へと移っていくことも推し進めました。
仕事が高度化して楽になったはずなのに昔よりも大変…というのは、人間が担うべき仕事のレベルが昔よりも上がっているからに他なりません。
このことは、去年と同じ仕事の仕方というのは、もう今年には訪れないことを意味します。機械を入れたから楽になる…は、目先の作業からは解放されるかもしれませんが、その先のもっと高度な仕事に取り組むことになることにも気付いておくことが大切です。
もう一方の高度化は、商品サービスの高度化です。より高度な道具を得て、商品サービスに求められるレベルも上がってくることは言うまでもありません。
そして、お客様が商品サービスに望むレベルというのは、より未来を指向したものとなることを考えれば、製品開発の時点で未来までの先回りも考えておかなければなりません。
こうした高度化というのはこれからも続く普遍的な変化トレンドだということです。
そうした世の中の構造、自分たちが置かれている状況を認識し、今やるべきことに粛々と取り組んでいくことが大切です。
ですから、このままじゃ…という認識は、世の中の構造、自分たちが置かれた状況認識、今やるべきことへの理解ですから、極めてポジティブ、前向きな姿勢といえることです。
高度化する世の中で今やるべきこと…、それは行動的努力よりも思考的努力が欠かせません。つまり、行動する前に考えるという準備をすることです。
これはいわば「木を切り倒すならまずノコギリを研げ」ということです。切れないノコギリで頑張るよりもノコギリを研ぐという準備が大切です。
先ずは行動…という意識も大切ですが、その行動が「ノコギリを研ぐ」なのか、切れないノコギリで「切り始めてしまう」のかでは、意味が違うということです。
多くの経営者が準備の整わないまま切り始めてしまいます。というのも、作業的なことを始めてしまう方が心理的に楽だからです。
確かに行動した分、動いた分だけ木は切れていくかもしれません。しかし結果は、刃を研いだ効率的な隣のチームが先に木を倒すことになるでしょう。
当然のことながら、経営も高度化しています。次なる打ち手は、今のキャッチアップでは足りません。そうした高度化を織り込んだ未来進行的な準備が大切です。
次なる打ち手は世の中の高度化分を織り込んでいますか?
少し立ち止まって、刃を研いでから…にしませんか?