【第541話】新事業アイデアを見出す3つの切り口と2つの舵取

「新事業って、みなさまどうやって見つけてるんでしょうかね?」と社長。残りの経営者人生を賭けてやってやる…ということは決めたものの、今考えているアイデアに自信が持てないとのこと。

 

新事業展開を考える際、まず大切な意識は、どこかに答えが「在る」のではなく、自ら答えを「創る」という意識です。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、ご自身が出題者になってそれを解くことに挑む…ということです。

 

そうお考えいただけば、答えを探そうとすることも無くなるはずです。自らにどんな問題を課すのか…新事業アイデアの本質と向き合い始めることができるでしょう。

 

ちなみに、事業、ビジネスというのは最初の建付けで成長ポテンシャル、収益性、長寿性…そうしたことのほとんどが決まってしまいます。ですから、この最初、もっと言えば始める前の準備がとても大切です。

 

では、この準備としてどんなことに取り組んでいけばよいのでしょうか。ここでは大きく3つの切り口がヒントを与えてくれるでしょう。

 

まずは「付加価値」です。ビジネスによって付加価値、利益の生み出し方が違うためです。

 

世の中のビジネスは大別すれば「流通業」と「製造業」から成っています。製造業は材料に加工して製品を造るビジネス、流通業は出来上がった商品をお客様にお届けするビジネスです。

 

まず流通業的な新事業は、既にある商品の販売に取り組むということで比較的始めやすいものです。

 

ですがここで知っておきたいのは、流通業では商品は決まっていますから、お客様にお届けする部分で違いを生み出しにくく、どうしても価格勝負に陥りやすいということです。そして、利益の源泉が仕入れと販売価格との「値入」という性格から、付加価値を生み出しにくく量で勝負する商売になりがちです。

 

一方、製造業は自ら商品を造るため参入しにくいものの、商品開発や製造という創意工夫でより大きな付加価値を生み出す可能性があり、質的な勝負に向いています。ここで商品製造は外注、OEMも可能ですから、必ずしも自社で工場を…と考える必要はありません。

 

よって、流通業ならば製造業に向かっていくことでより高い付加価値を目指していくことになりますし、製造業ならば流通業を内包していくことで、トータルの付加価値を上げていくことが見込めます。

 

2つ目の切り口が「商品市場モデル」です。どんな商品サービスをどんな市場に売っていくのか…の組合せを考えることで、新事業のアウトラインをクッキリハッキリさせていくことができます。

 

新事業アイデアはどうしても「どんな商品」から考えがちです。ですが「どんな市場」、どんなお客様に精通しているか…から逆算することで良い新事業アイデアに向かっていくことができることも忘れてはなりません。

 

そして最後、3つ目の切り口が「文化」です。自社がどんな文化に根付いて事業をしているのか…ということです。

 

例えば、鮨、天ぷら、イタリアン…という看板はその“心”、食文化を扱う製造業です。一方、「ワインと焼鳥」は取扱商品を言っている流通業です。似たような看板であってもここに商売の中身、本質的な違いがあります。そのことに気付ける理解が失敗を防ぎます。

 

自社が立脚している文化、心の系譜を紡いでいこうとする意識が大切です。新事業なんだからもっと広く考えないと…といったアドバイスに耳を傾ける必要は全くありません。

 

そして新事業挑戦で、経営者は大きく2つの舵取りが大切です。従業員、お客様、株主といったステークホルダー全体にかかわる「企業価値」最大化。そして、関係者との約束を履行し続け、潰れないようにしてくための「信用財務」コントロールです。

 

これらが経営者の“仕事”です。世界を変える…は後にして、まずはこれらに粛々と取り組んでいきましょう。

 

新事業はもっとその先につながるものになっていますか?

経営者の仕事…、してますか?

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