【第540話】製品の“カタチ”をお客様が喜ぶ“カチ”にまで高める応用技術
「お客様から、ありがとうございましたとお礼の返信をいただきました…」と技術リーダー。仕事を進める上でお困りのお客様から技術的な問合せがあり、何度かやりとりしながら、これにしっかりと応えたことでお客様の仕事が進み、その御礼のご連絡がありました。
こうしたお客様からのお問合せ、どのように対応されているでしょうか?
おカネにならない面倒とグチるか、新しい顧客ニーズとニヤけるか…、ここが単なる製造請負で終わるか、開発品メーカーに昇れるかの違いを生む分水嶺です。
大切な点なのでもう少しお伝えすれば、外から見たら同じような製品を造っている製造業であっても、そのビジネスの中身というのは千差万別、売上や利益を生んでいる力点や仕組みが違います。
その違いが最も現れるのが「御見積」です。ビジネスが請負的、技術能力をそのまま売っていたならば、その御見積は材料費、労務費、一般管理費…といった項目が並んでいるものと思います。
一方、ビジネスが開発的、技術能力を製品化してから売っていたならば、その御見積には製品と製品価格が書かれていることになります。
このように、技術能力をそのまま売るか、それを製品にまで仕上げてから売ろうとするか…、その開発スピリッツが価格の決定権に大きく影響を及ぼします。
こうしたお話をお伝えすると、ウチの仕事は仕様がマチマチだからどうしてもそうならざるを得ない、業界の慣習だから、製品にして定価を付けても、結局、いつも半値八掛けだから…といったお声が聞こえてきそうです。
確かにそうした実態はあるでしょう。だからこそ、そうしたグチの一線を超えていくために、もう一息の努力が大切です。
製品にまで仕上がっているのに、それまでの努力が価格で報われない…、それが常態化していたならば、やはり何かを変えない限り、その結果が変わることはありません。
こうした高収益、売上利益、価格…のお話をする際、大切な前提認識があります。それは、高収益企業はそのお客様も喜んでいる…という共通点です。お客様も喜び自社も儲かる…という理想郷がビジネスにはあるのです。
成長戦略、高収益戦略…といったことを耳にした際、眉をひそめるとしたならば、経営者として一度考え直してみることが必要でしょう。
ではどのように考え直すか…。渾身創り上げた製品をお客様も喜び自社も儲かる価格で販売できるようにする。そのためには、3つの応用ステップを超えていくことが不可欠です。
まずは、製品に開発要素を埋め込むこと(設計)です。製品価値の核となる部分はこれまでにない要素として技術開発に取り組みましょう。
そして、製品の全体を物理的に完成させること(製造)です。開発要素を含んだ製品の全体を実用レベルで完成させる製造法を考えましょう。
最後に、お客様が望む条件をハイレベルで満足させること(提供条件)です。製品納入のタイミング、品質保証、アフターサービスといった付帯的な条件です。
お客様が御社の製品を購入するのは、ビジネスを進めるためです。そうであるならば、お客様のビジネスを進める高める…というところまで意識を共にすることが不可欠であることは言うまでもありません。
そこまでできて始めて、製品がお客様のビジネスに役立つ。製品の“カタチ”が“カチ”に変わる。このカチへの期待が価格になるということです。
とかく技術者は“今”に固執し、客観的意見として、できない…と答えがちです。確かに技術者として正しい意見ではあるのですが、大抵のビジネスは今ではなくこれから、“未来”の話をしています。
そうであれば、例え今はできなかったとしても1年後までにはできるようになってみせる…といった“未来進行形”で考えることが欠かせません。製品開発に取り組み、製品のカタチをカチにまで高めていくことでお客様も喜ぶ…が成長の本質です。
製品開発をカタチで終わらせずカチにまで高めていますか?
そのために未来進行形で考えようとしていますか?