【第532話】2025年、次なる一歩の踏み出し方
「この経営計画を握りしめ、これまで踏み出せなかった次の一歩を踏み出します」と社長。これまで、やるべき…と気付いてはいたものの、足元の事業も大変ということで、なかなか踏み出せてきませんでした。
しかし、販売の不安定さが増し、設備の老朽化も進み、人を採ろうとしても何ともならず、資金的にも不安を抱え…。
日々、そうした望まない状況と戦いつつも、既に分かっている未来を考えれば、もう手をこまねいている時ではないと覚悟を決め、この半年をかけて次なる打ち手の準備を進めてこられました。
釈迦に説法のようで恐縮ですが、世の中は変わっていきます。ここで変わっていく…というこの意味は、良くも、悪くも…ということです。
もう少し言い方を変えれば、望もうと、望まざると…。自社にとって都合の良い方向に変わってくれれば喜ばしいことですが、むしろそうでないことの方が多いというのが世の常です。
こうした変化への対応を考える際、望まない変化というのはどうしても受け入れがたいものです。
そもそも望んでいないのですから、それをそのまま受け入れるよりも、むしろそれは抗っていくべきことなのではないか…と考えがちです。
そして、多くの経営者は受け入れがたい変化に抗おうと、そこから生まれる問題の解決を目指し始めてしまいます。
当然のことながら、経営が抱える問題を正しく認識し、その解決に手を打っていくことは大切なことです。
ここで難しいのが「問題自体の認識」です。
例えば、地域経済への依存度が高いような経営の場合、「自社の売上減少は地域経済の低迷が原因である」、「よって地域経済の活性化が必要である」といった問題設定をしてしまいがちです。
そうして、地域の魅力を発信…といったことで、地域を活性化するようなビジネスを考え始め、行政や地域の企業と連携を組み、当該地域のみならずもっと広域で…といった方向に進んでしまいがちです。
これ、いかがでしょうか? もうお気付きのことと思いますが、こういった思考法が上手く問題を解決できることは絶対にありません。
むしろどんどんと問題状況が拡大し、収束に目途が立たなくなり、「発展的解消」といった結末を迎えることは自明です。
ここで問題設定上の問題は、自社の外に問題を求めてしまったことです。そしてなぜ自社の外に問題を求めてしまったかといえば、望まぬ変化を受け入れたくないという心理が働いてしまっていたからに他なりません。
経営者である限り覚悟しておくべきことは、「望むような変化などまずない」ということです。
ではこうした「望まぬ変化」とどう付き合っていくかといえば、ご自身の感情は一旦置いておき、まずは冷静客観的に考えて「この変化は世の中全体の視点から構造的変化なのか」と考えてみることです。
その地域の経済的衰退が構造的なのであれば、そのことに対して一企業が立ち向かうというのはそもそも無理な話です。
そうれあれば、そうした問題は自社の経営を考える上で所与の“前提”と認識すべきことであり、それを前提として打ち手を考えていかなければなりません。
例えそれが望まぬ変化だったとしても、それを前提として受け入れることが大切です。そうすることで自社の存続発展が期待できる“変化の恩恵”を受け取ることができるようになるのですから。
その問題解決は本当に抗うべき問題ですか?
望まぬ変化は所与の前提と受け入れ、その先に進みませんか?