【第523話】怖いもの見たさと好奇心のリスクマネジメント
「怖いもの見たさの勢いでここまでやってきてしまいましたが、会社も所帯も大きくなった今、もうそろそろしっかりと根拠ある判断でマネジメントしていかないといけないと思い始めまして」と社長。
経営者として才覚ある社長というのは、無茶苦茶しているように見えつつも致命傷を負わない…という世の不思議があります。
「冷たい海でも自分から飛び込めば死なない…」などという逸話を聞けば、「木を切るならしっかりノコギリを研ぎましょう」とお伝えしている私の仕事がなんと小さい事かと思ってしまうこともあったりします。
少し話はそれましたが、そうした豪傑社長にあっても、致命傷を負わないためのリスクマネジメントをされていることに気付きます。
その前に、企業にとって成長戦略とは、好奇心や探究心といったことです。
ですから、決して売上や利益の額、従業員の数、事業の数、商品の数…といった量的なことだけではなくて、商品の品質、製造コストの効率性、早い納期対応、顧客サービスの充実…といった質的なことも含みます。
あるいは、成長戦略とは、もっと多くを担おうとする社会に対する貢献意欲の現れでもあります。
稀に、経営者セミナーなどで、成長戦略というテーマでお話をさせていただく際、三代目、四代目…といった歴史ある企業の若社長から「弊社はそういうことを追い求める経営ではない」と反論されることもあります。
そうした際は、質的成長も成長戦略であり、同じではありませんか…とお伝えしています。
実際、多くの伝統ある企業は、しっかりと良いものを探求し、商品の品格を育てています。だから売れ続けます。
あるいは、そうした企業としての姿勢や徳、品格を磨くことによって人やおカネが集まっているのであり、むしろこうしたことこそ成長戦略の本質と呼ぶべきことです。
こうした前提的な整理をした上で、経営者にとって致命傷を負わないためのリスクマネジメントとは…と聞かれれば、どのように答えられますでしょうか?
それは「時間をかける」ということです。
経営者としての好奇心、その先を見たいという探究心、それを目指すために、そこに「時間をかける」ことです。
大切なことなのでもう少し補足すれば、この「時間をかける」ということの意味は、「小さい努力で大きな効果」を得ようとするのではなくて、「最大の努力で超最大の効果」を目指すことだということです。
最大の努力…時間をかける。
今日をマネジメントするためには“効率”が大切です。ですが、未来をマネジメントしようとするならば、大切なのは“効果”です。
これは、昨今言われる。コスパ、タイパ…、効率的であることとは真逆です。効率的にやれないか、他人よりも上手くやれないか、損しない確実に報われる範囲で…といったことを考えているようでは、本当の意味で成長を目指すことはできません。
やると決めたのならばやる…、その本気度が「時間をかける」に現れます。
その先に、好奇心を持っているのであれば目指してみるのが吉です。その際、効果的なことは腰を据えてしっかりと投資することです。
どうせやるのですから、投資を最小にして効率的にやろうとせず、投資を最大に効果的に進める意識が大切です。
効率主義でチマチマと色々な商売に手を出している時間はありません。好奇心に従い効果主義で思いっきり進む…これが高みを目指すリスクマネジメントです。
経営の質的成長に目を向けてますか?
効率よりも効果…を高めようとしていますか?