【第522話】成功する経営は歴史に学び計画に織り込む
「いや~、やっちゃいました。一旦、撤退です」と社長。とある新分野進出にあたって、采配を間違い、すぐにそのことに気付き、修正に入りました。
というのも、新分野進出にあたりその分野を勉強したことで、自社の強みを忘れてその分野に合わせてしまったことで、まったく強みを活かせずあっという間に負け戦となってしまったのです。
もちろん、途方もなく高い勉強料になってしまったことはいうまでもありません。
経営者は、常に勉強を強いられます。今の事業を動かすだけでも、取引規制、労働法規、会計制度、業界動向、価値観の多様化、技術革新、情報化、国際化…、アンテナを張っておくべき分野は多岐にわたり、得意不得意などと言っている暇はありません。
例えば、2024年の通常国会では61の法案が成立しています。そうした新たな法令、規則、ルールといったことに対応するだけでも大変なのに、目に見えないようなことについても感じて対応していかなければなりません。
ところで、勉強するとどう嬉しいかといえば「先が読めるようになる」ということです。要は、こうすればこうなる…が見えるようになってくるということです。
そして、勝負しているビジネスで成果を上げ続けるために必要なの能力水準についても、見当がつくようになってくるものです。
例えば、ドイツの政治家、オットー・フォン・ビスマルクはこう言っています。「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」と。
これは、愚者は自分で失敗しないと失敗の原因を学ぶことができないが、賢者はより多くの経験や知識(=歴史)を身に着け失敗を避けることができる…という意味です。
この格言から分かることは、学びは「失敗しないための原理原則」であるということでしょう。一国の存続の舵取りにあって「失敗しない」ことはとても大切なことです。
これを事業経営に当てはめるならば、失敗しない、負けない、潰れない…といったことですが、どこか何かが足りません。
それは、潰れないのも大切だけど経営を伸ばしていくためには…という視点です。
経営を伸ばしていくためにリスクは憑きモノです。ところが、勉強することでこうすればこうなる…が見えすぎるようになり、その結果としての清濁が分かってくることで、むしろ行動できなくなってしまうことがあったりします。
面白いことに、リスクを取って進もうと考えて学んだ結果、進まない方が良い…という感情に至ってしまうということが起こり得ます。
アップル創業者、スティーブ・ジョブスのスタンフォード大学の卒業式でのスピーチ“stay hungry, stay foolish(ハングリーであれ、バカであれ)”が有名です。
これは、アメリカ最高峰の頭脳を持った学生諸氏に対して「高い目標や夢の達成に強い意志で立ち向かえ、頭ばかりで動けなくならないようにバカになれ」と励ましています。
しっかりと、動けなくなるほどのところまで学び、そこからバカになって動け…と。
つまり、経営者にとっての学びとは、こうすればこうなる…経営シミュレーションのための学びです。決して、次なる儲けのネタ探しや、拾えそうなおカネ探しではありません。
当然のことながら、仕事は仕事ができる人のところに行く…ものです。
そう考えれば、企業における競争の本質とは、いわば「自助努力」であって、相手を打ち負かすためのものではありません。
歴史から学び、こうすればこうなるはず…が計画であり、ご自身の経験を超えて自社を成長発展に導いていくための方法といえるでしょう。
粛々と歴史に学び、ご自身の行動からもフィードバックを得ることで、独自性あふれる豊かな成長を歩むことができます。学ぶことで他社と同じ…になどならないのでご心配なく。
他者の経験、歴史を計画に取り入れていますか?
後はそれに賭けてバカになって動いてみませんか?