【第517話】成長発展と“業”の最適化問題
「商いの基本は大昔から何も変わらず、いかにお客様の方を向いているかに尽きるのですが、しかしそんな当たり前のことができない企業が如何に多い事か…」と、懇意にさせてただいている経営者からのメッセージ。
全く以てそのとおりと、頷きながら読みました。
当然のことながら、こうしたメッセージをやりとりするに至ったには理由があります。それは、共通の知人経営者が、残念ながら窮地に堕ちてしまったからに他なりません。
そもそも、経営は浮き沈みのある世界です。そうした浮き沈みの世界ですから、その荒海を渡り切る経営者と残念ながら沈む経営者がいらっしゃいます。
ただし、もう一つの本質的な問題は、沈む理由が荒海だったからなのか…という点です。
これはもう答えが出ています。静かでも沈む…のです。
むしろこうした状況というのは、自ら堕ちていく…とも言える状況であり、経営の存続発展、延いては成長発展を目指すならば、実のところ堕ちないようにするというのも、肝心なことだったりします。
日々、直面する問題にどのように対処するか…。そこには、目的とそれを達成するための選択肢や条件があります。
こうした目的達成や問題解決に対する解法に「数理計画法」があります。数理計画法とは、一定条件の下で目的を最も達成するための技法です。
例えば、コストと品質計画、納期と生産計画、在庫削減計画、配送ルート計画、広告予算配分計画…といったことです。
こうした数理計画法において大切なのは、何が目的で何がその制約条件なのか…という主従関係を予め考えておかなければならないということです。
この目的と制約条件が入違ってしまうことで、経営が堕ちる…ということです。
事実、店舗数を最大化するために品質を落としてしまって堕ちた飲食店…といった事例は枚挙に暇がありません。
話が少しそれましたが、数理計画問題を用いて経営の成長発展を定式化してみたいと思います。
ここで経営の目的を「成長発展」の最大化と設定します。それは、経営には質的でも量的にも、進歩発展という意味で、存続のためにも一定の成長が必要不可欠だからです。
そして、その制約条件こそが、数理計画問題です。ここでは、経験的に3つの“業”で定式化してみたいと思います。
《経営の数理計画問題》
目的 Max 成長発展
制約条件
・Max 探求 (本業条件)
・キャッシュ≧0 (事業条件)
・Min カルマ (自業条件)
ここで「本業条件」とは、自らの組織能力が最もお客様に貢献できる分野のことです。経営がお客様活動であるということから考えれば、お客様に貢献できる優先順位で成長発展を考え、その分野や周辺を探求し、深めていく意識が大切です。
続いて「事業条件」とは、資金(キャッシュ)を途絶えさせない、倒産しないという条件です。これは継続条件と言い換えることもできるでしょう。
そして「自業条件」とは、いわゆる悪いカルマを最小化していくことです。言っていることとやっていることが違っていたり…というのは業(ゴウ)となり、いずれ自らに跳ね返ってくることです。
経営はリスクの世界、だからこそいずれトータルで“自業自得”が成り立つからこそ経営は面白いのです。
その成長発展は本業を探求していますか?
そして日々、“業”と向き合っていますか?