【第516話】売れて儲かる商品開発の条件
「ウチの技術力を活かして新商品を開発したんですが、どうも何か足りていないようでして…」と社長。
この新商品のプレゼンをご説明いただいた後、その場で類似商品をネットで検索して、価格もご覧いただきました。
「ですから…、こうした他の商品とウチのは〇〇が違うんです」と開発責任者は、少しご立腹の様子です。
当然のことながら、なぜ類似商品の価格をご覧いただいたかといえば、その理由はシンプルです。
これらよりも安くすれば売れるかもしれませんが、みなさんはそれでも良いのですか…という意思を確認したかったからです。
もっと言えば、いくら“違う”と言ったとて、今のままだったならば価格勝負にならざるを得ないということをお伝えしたかったからです。
さらにもっと言ってしまえば、一生懸命にご説明いただいた“違う”がビジネスとして成功する商品開発の条件を満たしていないのです。
新商品、新事業、新分野…、こうした挑戦領域に進んでいく際、絶対に忘れてはならないことがあります。
それは、「売れるのと儲かるのとは違う」ということです。
ここで損益分岐点分析や原価計算の説明をするつもりは毛頭ありません。そうした詳細な計画に入る前に、もっと大切な成功条件があるからです。
そもそも論として、商売はお客様あってのことです。そしてそのお客様にどうお応えするかでビジネスの類型や収益性は決定づけられます。
まず、御社の商品がお客様にとって“コスト”の場合です。
この場合、その商品はお客様が削減できるコスト以上の価格で販売することはできないということです。それは当然のことです、お客様にとってメリットがないからです。
あるいは、お客様はこう考えるはずです。「同じようなコスト削減を実現できる商品をもっと安く買えないか」と。
もうお気付きのことと思いますが、御社の新商品を購入することでお客様が削減できるコストと購入費との差分は、果たしてビジネスにおける“価値”と呼べるものなのでしょうか…ということです。
「そりゃコスト削減できたら嬉しいに決まってるでしょう」という声が聞こえてきそうです。それはそうなのですが、ここでお伝えしようとしているのは、その先です。
ちなみに、お客様にもお客様がいて…ということです。ビジネスは、どんなものであってもこの最終的なお客様がその価格を負担する構造にあります。
このことから逆算するならば、価格=価値ですから、この最終的なお客様にどんな“価値”をもたらすことができるか…まで考えることが欠かせません。
実は、どんなビジネスもこの一点に尽きるのです。最終的なお客様が価格を負担するということは、この価格に見合った“価値”への貢献を念頭に置かなければ、例え売上になったとしても利益を出せる可能性は限りなく低くなります。
お客様が創ったビジネスに御社がコストとしてぶら下がっていたならば、売上にはなったとしても利益を出すことは難しいということです。
御社の新商品のその“違う”は、お客様のお客様、延いては最終的なお客様にどんな“価値”をもたらすことができるでしょうか?
お客様にとって真のパートナーとして認めて欲しければ、“コスト”ではなく“価値”に意識を向けて商品開発に臨むことが大切です。
新商品の開発意図はお客様にとって“コスト”ですか“価値”ですか?
新商品開発は、お客様のその先まで“価値”を届けようとしていますか?