【第508話】誰がどう嬉しいのか説明して!
「なかなかこの商品の良さが分かってもらえなくて。一度、使ってもらえれば分かってもらえるはずなんですが…」と社長。
この新商品の良さを伝えたいと、広告のやり方を指導願いたいとのご意向です。
確かに新規性のある面白い新商品です。しかし、まだビジネスとして採算に乗せるには煮込みが足りていない状態です。
つまり、いい線は行っているものの、ビジネスとしてまだ完成と呼べるところまで到達していないのです。
ちなみに、ここで問題は何かといえば、新商品が物理的に一定のカタチに出来上がったことで、新商品はもう“完成”したと考えていることです。
こうした際、まだ完成していないことに気付いていただくために、実にシンプルな質問をしています。
「誰がどう嬉しいのか…、もう少しご説明いただけますか?」
この質問に、的確に答えられたならば、それを書き起こして、イメージ画像化して、広告を展開することができます。
ただし、ここでこう質問しているということは…です。
実際、多くの場合、新商品の特徴を、もう一度もう少し詳しい説明をされます。そしてその説明をしながら、だんだんと気付かれます。
自分たちの話をしている…だけ…だと。
新事業構築プロセスにおいて、こうした状況を「顧客不在」と呼びます。
当たり前ですが、ビジネスは「お客様活動」です。お客様あってのことであれば、お客様のこととして話せるところまでの準備が必要です。
確かに、進歩発展の中でビジネスには常に新しさが求められます。
ただし、新しいだけの商品を作るのは、とても簡単なことです。ただ、作れば良いのですから…。
新商品開発が完成と呼べるのは、その新商品がお客様にとって新たな「嬉しい」をもたらすところまで考え抜かれてからのことだということです。
それまで、その新商品は、例えカタチ的に出来上がっていたとしても、まだ“試作品”なのです。
その試作品を、永く愛される商品、会社の看板商品、これから10年の成長原資…に仕上げていくためには、やはりこの質問に答えられなければなりなせん。
誰が、どう嬉しいの…?
「誰が」も「どう嬉しい」も具体的であることが大切です。
具体的…とは、お客様が御財布を開く理由になっているかどうかということです。
経営がお客様活動であるならば、社長は、ある意味で「お客様側」の人間でなければなりません。
ですから、これまでの新商品開発担当の頑張りや苦労を知っていたとしても、その試作品に対して「誰がどう嬉しいのか…説明して」と、もう一歩、踏み込んでいかなければなりません。
簡単そうにも聞こえますが、それが大変なことは重々承知しています。色々と試作してきたんだから、もうここらへんで勘弁してくれ…というお気持ちも分かります。
ですが、そこまでしっかり、完成まで仕上げることが、むしろこれまでの努力を無駄にしないことにつながります。
あと一歩、前に進んでみませんか?
お客様の話になるまで準備しようとしていますか?