【第506話】ビジネスの核とは外部から調達できない部分のこと

「新しい工場の建設に挑むことにしました。そこでは最新の〇〇機械を導入するので××という新製品が造れるようになります」といった計画をお聞きします。

 

確かに、今売れている既存製品も、永い目で見ればいずれは陰りを見せていくでしょうから、新製品を投入しながら製品ラインナップの新陳代謝を計画的に促していくことは大切な経営戦略です。

 

しかし、生産機械を買ってくれば誰にでも造れてしまう新製品というのは、ビジネスとしていかがなもんでしょうか。こうした際、計画段階でもう一ひねりしましょう…とお伝えしています。

 

その理由はとてもシンプルです。この計画意識だと投資を採算に乗せることができないことが確定しているからです。

 

なぜそう断言できるか…といえばその答えもシンプルです。それは、その新製品の売価は原価に収束してしまう…からです。

 

まずは、最も単純なところから整理していきましょう。××という新製品を欲しい人がお客様です。そして、そのお客様も〇〇機械を購入すれば同じ××製品を造ることができてしまいます。

 

では、そのお客様が、自社で〇〇機械を購入せず御社に××製品を発注するのはどういった条件の場合でしょうか?

 

その答えはとてもシンプルです。それは自社で造るよりも安いから…に他なりません。つまり、お客様がその新製品を御社から購入する理由というのは、最初から値段だけなのです。

 

そして、自社で造るよりも安い…という意味は、その値段は良くて原価、大抵は原価割れ…という訳です。

 

こうした取引構造なのですから、投資を回収することなどままならないことは端から明らかです。

 

ビジネスを考える上で大切な意識は、設備(固定資産)を持つということはリスクだということです。

 

どのようにリスクかといえば、一旦、設備に投資してしまえば、現金はその設備に姿を変え、現金が設備として固定化されてしまうため、他に使えなくなってしまうということです。

 

こうしたリスクを負うのであればそれ相応のリターンを計画時点で考えておかなければなりません。

 

まず、ビジネスの原則として「誰かの代わりにやるだけの仕事」というのは売上にはなったとしても利益を生み出すことはありません。あくまでも原価の回収までがトントンです。

 

ですから、計画段階でもう一ひねり、誰かの代わりに留まらない何らかの付加価値を考えておくことが大切です。

 

確かに道具の進歩によって新たなビジネスが生まれることもあります。よって、その道具さえ手に入れれば…と考えがちです。

 

しかし、それはあくまでも道具の進歩であり、ビジネスとは常にその道具の使い方によるものです。

 

いくら新しい道具だからといって、それを普通に使う程度のビジネスであれば、そこに創意工夫、付加価値はありませんから、当然、利益を生み出すようなことはないのです。

 

なぜこうした発想が生まれてしまうかといえば、そこには経営者として意識の持ち方があります。ビジネスは既にどこかに在って、それをもらおうとする意識です。

 

経済が成長している時はそれでも良かったのかもしれません。しかし、今は足りてる時代…。

 

ビジネスの核となる創意工夫は、買ってくることも、外注することもできない部分のことです。渾身の設備投資であればこそ、計画段階でもう一ひねり、付加価値を高める工夫を仕込んでおくことが大切です。

 

そのビジネス、道具や設備への相乗りに留まっていませんか?

それら道具を使ってどう戦うかを計画していますか?

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