【第503話】商品を「作る」と「売る」、どっちが大変!?
「商品を作るだけなら簡単、売るのが大変だって従業員に言ってるんですよ」と、とある食品メーカーの社長。
食品メーカーということですが、自社で企画開発した商品の販売についても、その多くを自社で実施されています。
これは、いわゆる製造小売業と呼ばれる新業態で、ネット直販の普及と共に、メーカーがその流通販売までを内包する新たな事業形態として台頭してきました。
従前、製造メーカーは製造までが仕事で、あとは卸売や小売、販売代理店が売ってくれる…といった分業が常識的でした。
ですから、メーカーの社長が「作るのが大変」ではなく「売るのが大変」と口にすること自体、とても新時代的な発想です。
では、商品を「作る」のと「売る」のは、ビジネスとしてどちらが大変なのでしょうか?
大抵の場合、作るビジネスの人は「作る」のが大変といい、売るビジネスの人は「売る」のが大変と言います。
その理由はとてもシンプルです。それが仕事だからです。
今の時代、アウトソースすればどんな商品も一定のカタチに造りあげることは、比較的容易です。
ですから、前述の社長は「作るのは簡単、売るのが大変」と言っています。
ですが、これを逆から見れば、「売れるレベルに作るのは大変」ということでもあります。
ここで、「作る」の意味が「売れる商品を作る」であったならば、「作る」に既に「売る」が包含されていることになります。
そもそも、作るビジネスに軸足を置く製造メーカーが目指す商品開発とは、当にこのことなのです。
作るビジネスに軸足を置く企業で「作る」とは「売れる商品を作る」という意味であって、「作る」に「売る」が包含されていると考えるべきことです。
ですから、新商品の企画開発は、売れること…が開発目標と言い換えることもできます。
売れるレベルにまで商品を作り込む…のがモノづくり企業の王道です。その途中で作り込みを諦めてしまってはなりません。
だからこそ、売り始めたけど売れない…時は、何か売り方を考えようとする前に、今一度、商品の企画開発に立ち返って見る意識が大切です。
ただし、それが大変なことは重々承知しています。やっと完成した商品が未完成だと言われれば、それは気持ち穏やかでいられるはずもありません。
こうした状態の時、自社は「作る」企業なのか、「売る」企業なのか…その存在意義を問うてみていただきたいのです。
今のままのフツーレベルの商品を何らかの販売方法を用いて売れたとして、それで本当に良いのでしょうか。
ちょっと考えれば分かることですが、「作る」ビジネスが目指すは、商品力で売ることです。
商品力こそ販売力であり、その商品力を高め続けようとすることが、これからの存続発展の王道であることに疑念の余地はありません。
大切なことなのでもう一度お伝えすれば、売れない理由は商品力にあります。更にいえば、売れさえすれば利益の出る価格で売れるためには、相応の商品力が必要です。
もし、売れないならば、今一度、商品開発に立ち返る勇気が大切です。
売れるレベルまで商品力を高めようとしていますか?
商品を「作る」は「売る」までを包含していますか?