【第500話】やった後を計画する仮説思考が未来を拓く
「あれで上手くいくとでも思ってるんですかね…」と社長。とある若き経営者の新たな挑戦話を聞いて、口をへの字に閉じ、眉間にシワが寄っているなと思っていたところ、その場を後にする際、ボソッと一言、正直な気持ちを口にされました。
こうした否定的なことを口にされるのですから、こちらの社長、古くて頭の固い人と思われた方も多いのではないでしょうか。
実のところ、全くそうではありません。極めて挑戦的な経営をされていて、その実力は折り紙付きです。
ではなぜ、若き経営者に直接そのことを伝えなかったのか…。それはこちらの社長の優しさからくる我慢だということです。
その優しさとは、「今のままだと躓くことはほぼ見えているけど、それに早く気づいて何とか立て直してくれるであろうことを信じてあげよう」と思って、ご自身の意見をグッと飲み込んでおられるということです。
叩き上げ、海千山千の社長というのは、実のところ緻密で計画的です。
それはそうです。移り行く世の中にあって、その荒波に船をこぎ出しているのですから、しっかりと計画していなければ、今、存続しているはずがないのです。
仕事柄、多くの新事業プラン、経営計画をお聞きします。これまでに千を超える計画に触れれてきたことで、そのお話をお聞きした時点で概ね成功確率が読めるようになってきました。
では、成功確率が低いから止めた方がいいか…というとそうではないということもお伝えしておかなければなりません。
そこからいかに成功確率を高めてから実行に移すか…が“計画策定”だからです。
ちなみに、なぜ実行前に計画の成功確率が読めるかというと、そこにはとてもシンプルな尺度が存在します。
それは、「やることの計画」なのか「やった後の計画」なのかということです。
これは実に単純な話です。これから「やること」というのはいわばアクションプラン、現場管理のガントチャートに過ぎません。
本物の経営計画とは、実行することの整理に留まらず、それらを「やった後」を計画しているということです。やった後…こうやったらこうなる…、いわゆる仮説です。この仮説のカラフルさが経営計画の成功尺度の正体です。
当然のことながら、望む結果を手に入れたいならば、それは最終的にはやってみなければ分からないことです。
ただし、やってみなければ分からない…にも程度があって、やること止まりなのか、やった後まで見通せているのかの違いという訳です。
むしろ「後はやるだけ」まで計画が研ぎ澄まされたならば、それはもうほぼ成功を手中に収めているといえる状況といえます。
実務的に難しいのは、「後はやるだけ」まで考え続けながら実行を待っていられるのか…という問題です。
ビジネスチャンスというのは、いつも今にあるものです。このため、どうしても前のめりになりがちです。
ですが往々にして、走りながら考える…などと言われますが、これは悪魔のささやきです。
そのレースに出てしまったならば、走りながら他のレースに参戦することはできません。一度走り始めたら一定の成功と呼べるところまで絶対に走りきらなければならないことです。
経営者の仕事は未来を考えること…と言われます。それは、「やること」よりも「やった後」まで考えようとすることで成功確率を高めることができるということです。
計画がアクションプランになってしまっていませんが?
計画は、やった後のことが計画されていますか?