【第493話】賢い経営者のちょいカメ常勝戦略
「まずはこの5人、兼任で新事業の検討にあたらせようと考えています」と社長。新事業立上げはとても大変なこと、立上げチームのメンバー編成はとても大切だということをお分かりで、社長と精鋭5名でプロジェクトチームが発足しました。
こうした革新的なプロジェクトと聞けば、メンバー全員が寝る間も惜しんで事の推進にあたる…といったイメージがあろうかと思います。
面白いことに、こうした革新的、画期的な新事業の立ち上げほど、実のところ着々と、粛々と準備が進められます。
ここで着々と…というと急いでいないという印象を覚えられるかもしれません。しかし、実体はそうではありません。着実に時流に遅れることなく、そして、情熱がない訳でもありません。
ところで、VUCA時代と言われます。VUCAとはVolatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字です。
経営環境の捉え方は、変化が速い…と言われていましたが、むしろ、変化が大きい…といったことの視点が大切になっています。
経営の仕掛け方として、先行者利益という考え方があります。最初にやった人がその恩恵として多くの利益を得る…といった戦略思考アプローチです。
ですが、前述のような、着々と粛々と…事を進めるような経営は、言わずもがな、見かけ上、こうした先行者アプローチを採っていません。しかし、高打率で新事業を成功させています。
なぜ、一定の成功を確実なものとして前に進んでいけるのか…、そこには常勝戦略ともいえる思考パターンが存在します。
まず、ビジネスとは、基本的に社会競争だということです。
ですから、動いておくこと、運動量は絶対的に必要なことです。しかし、行動にも色々あって、どういった行動なのか、その中身が問われます。
御社のご商売が、流通業、販売代理業、商社など「売る商売」であったならば、あまり検討時間を賭けず、新しい商品の取り扱いを始めてみるのも良いでしょう。
売れなければ取り扱いを止めればいいだけですし、リスクも限定的、仕入在庫分だけで済むからです。
しかし、御社のご商売が、製造業、エンジアリング業など「作る商売」であったならば、そこは少し考えながら進める賢さが大切です。
その意味で、様子見、日和見も賢い戦略です。少し遅れたように見えてもそこで得られる情報量が増えることによるメリットも大きいのです。
鬼ごっこが成り立つのは、追いかける鬼の方が有利だからです。後発にも優位性があって、「成功する」と「失敗しない」が同居する世界では、一歩遅れたように出航することも賢い戦略なのです。
「作る商売」で大切なのは設計図です。モノづくりの世界では、まず設計があって製造があります。ですから、設計に優位性が築けているか、設計に間違いはないか…、確認しながら時間をかけて進むこともまた戦略なのです。
ただし、運命の分かれ道は、先人の知恵の活かし方です。ほとんどを当てる堅実な戦略とは、こうすればこうなる…という原理原則を見出せているか否かに懸っています。
ある程度、勝算を高めてから実行する。これがビジネスの設計意識、仮説思考というものです。
そもそも失敗しない方が良いのです。商売の長寿を成功とするならば、失敗しないこと、踏み外さないことが大切です。
行動は大切です。ですが、深く考えずにやってしまうことの代償は大きいものです。考えるための行動、不確実な時代を前提として、成功真理を見極めるまで考える準備意識が大切です。
急がずとも着実に時代の情報量を蓄積していますか?
その情報からその奥に潜む成功真理を見出そうと行動していますか?