【第457話】勘違い営業トークの矯正法
「人生、初めてのテレビ取材対応で緊張して…、頭が真っ白で何を話したのか覚えてません」と社長。
永い社歴にあって初めての自社看板の新商品。これを販売開始したところ、メディアの目に留まり、取材の運びとなりました。
当然のことながら、新商品の販売開始に合わせて、WEBサイトにも商品専用ページを設け、そこには渾身、考え抜いた営業トークが展開されています。
ここまで考えて、お客様に何をどんな順番で説明して…ということで商品専用ページを作ってきましたが、TV取材、社長の開口一番は、商品の話ではなく自社のことから始まりました。
あれだけ練習したのに…、染みついた思考パターンがそう簡単に変えられるはずもありません。
社長が自社を紹介しようとした際、「商品説明」よりも「会社紹介」になりがちです。
なぜか…といえば、その理由はシンプルです。社長が経営をプレゼンする場というのは、金融機関や公的機関、経営者の面前であることがほとんどだからです。
したがって、プレゼンは、「弊社は…」から始まり、「どんな業種でどんなお客様」、そして最後に具体的な「商品サービスの特徴」の説明という順番になりがちです。
一方、これがお客様への営業トークであったとすれば、この順番はいかがなものなのか…と言わざるを得ません。
例えば、マクドナルドに行って、カウンターで注文しようとしたところ、店員さんから「弊社マクドナルドは1955年、アメリカのイリノイ州で創業し、〇〇を理念に掲げ…」と始まったらいかがでしょうか…ということです。
これは、ウザい以外の何物でもありません。もちろんこの話を最後まで聞くこともないし、それからビッグマックセットを注文することもないでしょう。
金融機関に「会社紹介」するのと、お客様に「商品紹介」するのでは、話すべきことの順番が違うのです。
その答えからお伝えしてしまえば、順番が“逆”だということです。
つまり、この新商品は、〇〇の特徴がありお客様に△△をもたらします。この新商品は、これまでの概念をくつがえす◇◇思想で創られていて、弊社はこうした××に取組み、おかげさまで100年を迎えました…という順番だということです。
お客様は、新商品がご自身にどういった便益をもたらしてくれるのかに興味があります。お客様ご自身が、この新商品を買うと、どんな嬉しいことが待っているのか…をまず考えているということです。
そうした状況にあって、御社の成り立ちなど、今の段階でまずはどうでも良いのです。
ただし、この新商品、いいね…となり、購入を前向きに検討する段階まできたならば、この会社は大丈夫なの…と確認するため、御社の成り立ちなどについても知りたいと思うでしょう。
つまり、御社の経営理念、目指す世界観、こんなことに取り組んできました…といった自慢話は、営業トークを構成するピースとして必要ではあるものの、お客様に対して一番最初に説明すべきことではない…ということです。
「我々は〇〇な世の中を目指して、こんなことにチャレンジしてきて、この商品が生まれました…」といった営業トークというのは、一見、すばらしいことのように聞こえますが、これを「素晴らしいね」と言ってくれるのは親戚友人だけだということです。
お客様が新商品を購入する理由は一つです。その新商品がお客様にもたらす価値便益が欲しいものであること。そしてその価値便益に対して価格が見合っていることです。
崇高な経営理念や取組み意義も大切ですが、その高い意識を新商品の商品力としてお客様への価値便益として表現しきることこそ、ビジネスの核だということをお忘れなく。
営業トークは新商品の価値便益から始まっていますか?
営業トークが会社説明になってしまっていませんか?