【第445話】設備投資・今昔物語、何に賭けるか…勝負の新ルール

「次は売上30億を目指そうと話せるようになってきました」とI社長。ご自身で立ち上げたビジネスが順調に10億を超え、次なる成長に向けて意欲的です。

 

こう聞くと、いかがでしょうか?

 

鋭い経営者であれば、こう思うでしょう。「どうせ大きな初期投資をしたのだろう」と。

 

当然のことながら、投資額が大きくなれば、それだけ生産規模が大きくなるため、そこから生まれる売上規模も大きなものが期待できる可能性が高まることになります。

 

ですから、売上10億ならば初期投資も10億、場合によっては20億の投資があって売上10億なのでは…とお思いかもしれません。

 

先に答えをお伝えすれば、こちらの10億ビジネスの初期投資は数千万円です。むしろ初期投資を抑えつつリターンを最大化することが事業モデル構築の目標イメージとして当初から想定されていました。

 

設備投資で多くの経営が伸びたり堕ちたりします。それだけ経営において設備投資の影響は大きく、重要な意思決定です。

 

ある意味、設備投資で売上が手に入るかもしれない…。こうした衝動が走るため、折角だからもう少し頑張っちゃおうかという気持ちになるのはとても良く分かります。

 

こうした状態の時、大切なのは成長への情熱と同じだけの冷静さです。ここで冷静さとは、設備投資の難しさ、その構造を理解した上で、設備投資に挑む意識です。

 

設備投資の難しさは概ね二つの要因に集約されます。それは「不確実性」と「不可逆性」です。

 

不確実性とは、やっていく上で計画通りにいかない程度を指します。思ったように売上が獲得できない、仕入れが上がった、設備が故障した、人員が確保できない、法律が変わった、自然災害に襲われた…といったことです。

 

設備投資とは、そこに憑いてくる不確実性とのお付き合いであり、そのことについての覚悟、ある意味で不確実性を織り込んでおくことが大切です。

 

不可逆性とは、一旦、設備投資をしてしまうと、そう簡単に元には戻せないということです。

 

もう少し実務的には、設備投資を回収できないかもしれない、どこかで諦めなければならないかもしれない、損切撤退も起こり得る…いわゆる埋没コストというリスクです。

 

回収できない埋没コストが、これまでに稼ぎ出した内部留保であれば、既に稼いだ資金が減るだけです。

 

ところが、これが借金だったならば…、物事はそう簡単には収まりません。

 

では、こうしたリスク要因にどのように対応していけば良いか…。ここで大切なのは「時間軸」です。

 

不確実性への対応としては、設備投資の回収期間が長くなるほど、その間に妙なコトが起こるリスクも高くなってきますので、設備投資の回収期間を短くしておくことが大切です。

 

不可逆性への対応としては、設備投資の金額が大きくなるほど、後戻りが難しくなりますので、なるべく小さくしておくことが大切です。

 

設備投資は回収期間が長いとリスクが高まります。ただし、それは短くすればよいというものではなく、どのような設備投資であっても、その先の布石となるよう、長期的に考えておくことが大切です。

 

その昔、経済が成長している時代、足りない時代…、設備を持って供給できれば売れた時代がありました。その名残から、今だ設備さえ持てば商売になると思いがちです。

 

今の時代、足りてる時代…、それは無理なのです。その設備を使ってどのようなビジネスをするのか。設備を道具としてその先を考える一工夫が大切です。

 

まだ設備が稼いでくれると思っていませんか?

設備は道具、新ルールでビジネスに挑戦していきませんか?

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