【第440話】経営存続発展の方程式

「どうしても…、これをやりたいんです。儲けようとは思っていませんので」と社長。まだお若く30歳代、この新事業に情熱をお持ちです。

 

なぜ、こうしたご回答を耳にすることになったかといえば、「今の構想のままですと、採算性として相当に厳しいことになりそうですが…」とお聞きしたからです。

 

経営とは、正解などない世界、何をやるにも正解はないのですから反対などしません。

 

ただし、正解は無くても理論はあります。理論、セオリーとは「過去の経験から、こうすればこうなる」という、いわば「先人たちの知恵」といえることです。

 

当然のことながら、採算を成り立たせなければ、その事業を続けることはできません。そんなことは、言うまでもないことです。

 

ところが、やってみなければそのことも分からない…というのが、経営の難しいところです。

 

なぜ、今のままだと採算が厳しい…とお伝えしたかといえば、もちろん、理由があります。それは、この社長が構想している新事業が、ある方程式を満たさないからです。

 

その方程式とは、「付加価値」です。

 

付加価値の考え方にも、中小企業方式など、色々な計算方法がありますが、経営判断に大切なのは次の考え方です。

 

付加価値額 = 期間売上 - 外部購入価値

 

ここで外部購入価値とは,この付加価値額を生む期間中に,費用として費消した機械設備の減価償却費とか保善費,製造に用いられた原料のように外部から購入したものにかかった費用のことです。

 

付加価値額とは、企業努力によって得た価値額であり、一般には,経営者,従業員の賃金総額,銀行などへの支払利子のほかに,利益処分により分配される役員賞与,配当などの姿で配分されるものです。

 

これをもう少しかみ砕いて理解すれば,二つの要点に整理することができます。

 

まず一点目は,付加価値とは仕入れた材料などを加工して製品にして販売した差額であるという点です。続いて二点目は算出に人件費を含まない概念であるという点です。

 

これらの点を考慮して前式に加筆すれば,次のように表すことができます。

 

付加価値額=期間売上-外部購入費 > 人件費

 

このように付加価値から従業員の給与賞与が支払われていることを定式化することによって,経営の採算構造を明確化できると同時に,従業員にはもっと給与賞与を上げたければ,その原資となる付加価値の創出を目指すべきとのメッセージとなり得るのです。

 

経営者は、ご自身のやりたいこと、会社として取り組むべきこと、目指す未来…といったことについて、情熱を持って取り組むことが欠かせません。

 

そして、それは「頑張った」といった精神論ではなくて、「採算を創る」という具体的なものであることが必須です。

 

前述の社長の新事業構想は、まだもう一ひねり、創意工夫が足りないため、例え努力を注ぎ込んだとしても、その努力に報いる付加価値を生み出すことが難しい水準でした。

 

とある経営者はこう言い切ります。「経営学どおりに経営する」と。

 

このことの意味とは、「先人たちの知恵をしっかりと活かします」ということであり、具体的には、ご自身のビジネスで「採算を創ること」への知的な情熱です。

 

社長ご自身や従業員の努力はタダではありません。付加価値が低い…というのは、こうした人の努力、延いては人を軽視していることです。

 

経営者の仕事は、意義ある仕事に取り組むことと同時に、その仕事を採算に乗せるための付加価値創りです。

 

その新事業は、努力が報われる付加価値になっていますか?

採算創りにもう一工夫しませんか?

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