【第438話】経営の成長発展にある2つの異なる道

「〇〇などの製品を取り扱ってもらえませんか…というご相談があり、市場規模はとても大きいので、どうしたものかと…」と社長、新たなビジネスチャンスを目の前に、期待とは裏腹に、どこか曇った表情です。

 

こちらのご相談、製品の種類的には、一見、社長の本業のようにも見えるのですが、事業モデル、商売の種類という視点から見ると、全く根本が違うご相談なのです。

 

ビジネスの収益性、延いては成長性というのは、概ね事業モデルの選択、ビジネスの型で決まってきます。

 

こんな物言いをしてしまったならば、「そんなことはない、努力次第だ」といったお声が聞こえてきそうです。

 

そのご意見も仰るとおりです。同業他社と比べて当社は上手くやっている…と。

 

もう少しだけ話を聞いていただければと思います。ここでは、他者よりも頑張っている、上手くやっている…といった現場レベルのことではなくて、もっと経営の戦略レベルのことをお伝えしています。

 

世の中には、ビジネスモデル構築といったことの教科書があふれています。こうした教科書の多くは、全てのビジネスを網羅するような汎用性の高い理論として構築されていて、それはそれで正しいフレームワークです。

 

ただし、ここでお伝えしたのは、経営者の思考的な型には根本的に2つの異なる思考があるということです。

 

そして、これら2つの異なる思考というのは、とても大きな経営上の問題を抱えています。それは、両立し得ない…という問題です。

 

ここで、事業モデルには、こうした経営者の思考軸によって大きく2つの型があります。

 

それは、「作る」と「売る」です。

 

ここで「作る」ビジネスというのは、いわゆる素材業、製造業です。こうした「作る」ビジネスというのは、仕入れたものに手を加え新たな製品に仕上げていくタイプのビジネスです。

 

よって、経営の収益構造は「付加価値」であり、収益性はその付加価値の生み出し方、創意工夫によります。よって、経営は売上よりも収益性が優先されます。

 

そして「売る」ビジネスというのは、いわゆる卸売業、小売業です。こうした「売る」ビジネスというのは、取り扱う製品があって、それをお客様にお届けするタイプのビジネスです。

 

このため、経営の収益構造は「値入」、「手数料」であり、収益性は率的に決まってきます。よって、経営が売上至上主義になりがちです。

 

前述の社長、大きな売上がもたらされるかもしれないご相談にあって、顔色が曇っていたのは、自社の本業が「作る」ビジネスなのに、製品が類似しているということで「売る」ビジネスに乗りませんか…とのご相談が来てしまったからです。

 

大切なことなのでハッキリとお伝えすれば、世の中には「作る」ビジネスも「売る」ビジネス、どちらも必要なのですが、その経営マインドが異なるため、経営として両立しにくいということです。

 

もっとハッキリとお伝えすれば、「作る」ビジネスの経営者は「売る」だけのビジネスに手を出すべきではありません。

 

日頃、どうやって付加価値を生み出そうか…を考えているのに、他人が作った付加価値に便乗しようとするというのは、「あきらめ」を意味するからです。

 

むしろ、取り組むべきは、自社製品を「作る」ことに加えて、「売る」までを目指していくことです。本当の意味で「製造・販売」です。

 

他者が作ったものを売るのではなくて、自社の製品を自社で売る。この意識が自社の創意工夫の付加価値・粗利を全て自社のものとし、高収益を生み出すための経営思考です。

 

御社の経営は「作る」ですか、「売る」ですか?

作ったならば、誰か売ってくれる…を願わず、自分で売りませんか?

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