【第382話】新事業にサイエンスとアートの神通力を宿す法

「初めて、やっと自分で創ったと思える商品になりました――、新商品を企画するってこういうことだったんですね」と社長、新商品のこれからに目が輝きます。

 

新商品や新サービスのプレゼンで、ここが新しい、これまでと違う、こんな着想…というお話をお聞きすると、これまでの頑張りに頭が下がります。

 

聞けば、実際、確かに新しかったりするのですが、「そうですね、でっ…?」となることもしばしば。

 

この「でっ…?」は、これまでのご努力を決して否定したり小バカにしたりしているのではありません。こうした努力を売上利益に転換していこうと願うならば、「あと一歩足りていないのではないですか?」ということです。

 

これを逆からいえば、「これで完成ですか?」ということです。

 

新商品の企画開発にあたって、その新たな商品がしっかりとカタチに仕上がることは、販売を開始する上で前提です。

 

このため、まだ煮込み不足の試作品段階、それがモックアップとして現実の姿形になったことで嬉しくなり、改良、創意工夫の余地を残した試作品のレベルで完成したと思いたくなってしまいがちです。

 

ちなみに、こうした「でっ…?」となる煮込み不足は、新商品を何とかカタチにはしたものの、新商品と呼ぶにはどこか技術的に物足りなくて、その技術的な手詰まり感を補おうとして、アートに走り煮込んだ感を醸し出そうとするような文脈で現れます。

 

経営において、技術といったサイエンスと、表現といったアートは、しばしば真逆の概念として理解されています。概念的には、サイエンスとは形式知による機能的価値、アートとは暗黙知による意味的価値と考えられています。

 

このため、新商品の企画開発にあたって、純粋科学系のビジネスでは機能的価値が優先されサイエンス軸に、伝統工芸系のビジネスでは意味的価値が優先されアート軸に拠りがちです。

 

このように、サイエンスとアート、時に真逆と考えられがちな概念によって、新商品は異なる入口から検討されがちですが、ここに煮込み不足の原因が隠れています。

 

サイエンスを入口とする場合、どうしても機能的に新しいだけで新商品と考えがちです。あるいは、アートを入口とする場合、意味的な表現だけで新商品と考えがちです。

 

少し考えれば分かることですが、どちらも新商品と呼ぶには足りてないのです。それぞれの立場からは新しかったとしても、ビジネスとしては煮込み不足であることは否めません。

 

“新”と呼ぶには、そのために達成すべき条件ともいえるレベル、領域があるのです。

 

こうしたレベル的領域でビジネスは二つに大別できます。まずは「今ある仕事をもう少し上手くやるビジネス」、もう一つは「少しでも新しい仕事を創るビジネス」です。

 

前者は、改善や学習(ラーン)の領域、後者は研究や創造(クリエイティブ)の領域です。当然のことながら学習領域の上側に創造領域があります。

 

もうお分かりと思いますが、サイエンスであろうがアートであろうと、学習領域にいる限り、それは本当の意味での「新しい」ではありません。そこから一歩、創造領域に踏み出してこそ「新しい」と呼べることです。

 

面白いことに、この創造領域まで登っていけば、サイエンスとアート、対局とされる概念は交じり合い、融合します。

 

新しい、人とは違う、斬新な着想…、この際、学習領域に留まらず創造領域で考えることで、サイエンスとアートは融合し、本当の意味で新しいが生まれ、繁盛への道が拓けるのです。

 

創造領域とは、自分で考えるということです。自分なりに考えれば、大抵、新しくなるのです。考える…が学習領域だから、新しいという主張にムリが生じます。

 

どこかに先人が解いてくれた答えがあると思っている限り、学習領域から抜け出すことはできません。答えを探そうとせず自分で出題して解こうとする心意気が大切です。

 

サイエンスとアートが融合する創造領域で考えていますか?

そのために答えなど探さずご自身で考えようとしていますか?

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