【第367話】苦境越えはステージアップ意識で
「この商品、本当に売れるんでしょうか…」、とある新事業立上げのプロジェクト会議の休憩時間にこんなご質問がありました。
ここでしっかりとお伝えしておかなければならないのは、このご質問は経営者の方からではなくて会議に同席の従業員の方からだということです。
当然のことながら、経営者と従業員では頭の使い方が違います。経営者は仕事を創るのが仕事だということです。
このため、新商品が売れるかどうか…ではなくて、新商品を売れるモノに仕上げていくためには…を考えているということです。
ちなみに、こちらの経営者、物静かながらその本気度は相当なもので、例えるならば「全財産を賭してでも…」の覚悟です。
だからこそ、そうならないために、我々が判断の尺度をご提示しながら、プロジェクトをガイドさせていただいています。
昨今のコロナ禍にあって、「新しいことをしていかないと…」という機運は明らかに高まっています。ただし、この「新しい」にも色々あって、ここで経営者としての意識の違いが露わになってきます。
例えば、飲食店が〇〇イーツでデリバリーを始めた…といったことというのは、確かに新しい取組みではあります。
こうした「新しい」は、いつでもできたはずということから見れば「これまでやってこなかっただけのこと」といえるでしょう。新しい手段を導入するだけならやればよいだけのことです。
では、本当の意味で「新しい」というのはどういったことなのかといえば、そこには明確な一線が存在します。
それは、商品・サービス、顧客、採算…といったビジネス要素で「今よりもステージアップしている」ことといえます。
新事業、新分野、新商品…、何が新しいのかといえば「ステージ」なのです。そのステージがもう一段昇っていることが“新しい”の中身です。
先ほど、経営者の仕事とは、新しい仕事を創ることと、とお伝えしました。
特に、経営が苦しい状況に陥った時にこそ、平時には見えてこなかったこの意識の違いが表面化してきます。
苦境にあって、今の仕事に新しい手段、設備、…を導入するといったことというのは、今のステージの中での取組にすぎません。
このため、何もやらないよりは良いとして、それらの取組みは、苦境を脱するには直接的に向かっていないのだということを分かっておくことが大切です。
では、苦境にあってステージを上げるための取組みとは一体何なのでしょうか?
それは実にシンプルです。今の商品・サービスをもっと売ろうとする前に、一旦立ち戻って、商品力を上げることに取り組むということです。
これを弊社では「2ステップ絶対手順」と名付け、プロジェクト着手にあたってまず最初にじっくりとお伝えしています。
それは兎にも角にも、逆境を越えていくために欠かせないステージアップ意識をお持ちいただくためであり、安易な手段ベースの取組みで、時間を無駄に費やして欲しくないために大切なことだからです。
新しい作り方、新しい売り方を導入したところで、本当の意味で現状打開のスタートラインに立つことはできません。
一旦、立ち戻って商品力を整え直すことが必要であり、その際、商品サービスがお客様へもたらす価値便益を“ステージアップ”させることが大切です。
“新しい”が手段ベースになってしまっていませんか?
お客様への価値便益でステージアップを目指しませんか?