【第366話】経営が難しくなっている根本要因と対処法
「長い目で見て、今の仕事は確実に減っていくので、もう少し早い時期から取り組んでおくべきだったと思いつつ、やっとこうした気持ちになってきました」と経営陣には今の仕事を捨ててでも…という存続への覚悟がにじみます。
こちらの企業、とある分野のトップシェアで、いわば業界の雄というお立場です。このため、これまで業界を存続させていくための方向、いわば守りの立場で世の流れに対応してきました。
しかし、そのこと自体、本当に正しい舵取りなのか…ということについて、長らく経営陣で話し合ってきたことで既に共通認識が出来上がっています。これまでのご努力に頭の下がる思いがします。
そういう意味で、事業経営の核である大きな方向性についてはすでに固まっているので、その先からの議論に直ちに入ることができました。
実際、新事業立上げ、新商品開発、新分野進出…といったことに先立って、頑張ってアクセルを踏むその前にハンドルの切り方に対する覚悟が足りていないことが多いのも事実です。
こうした際、業種、業界、分野…といった既成概念を超えて、認識しておくべき大きな方向性の戦略があります。
それは、世の中のビジネスと呼ばれるものが、肉体労働から頭脳労働へとシフトしているという極めて大きな流れに対する認識です。
そもそも、技術革新、イノベーション、改革…といったことというのは、スキル、技能、技術といった今の延長線上にはないもっと根本的なところ。つまり、“考え方”の違いによってもたらされています。
そうであるならば、経営に革新をもたらすということは、技術技能といったことよりもむしろ、そうした技術能力の使い方に対する姿勢を問うてみる必要があるということです。
特に、モノづくり企業にあって、技術、スキルといったことを活かすためには、それらをどのように使っていくのかという頭脳労働レベルでの検討が欠かせないということです。
モノづくり企業においては、コア能力、リソースベース…といった、これまでに育ててきた現有能力をいかに活かしていくのかということは、これからを考える上で起点となる重要な軸足です。
というのも、そのこと自体がいわば強みだということです。多くの企業は、御社が既に持っているコレを持っていないのです。
これこそが、ビジネスの種、差別化の源泉、財産なのです。ただしかし、この技術能力をただ単に高めようとする意識に留まるのか、そこに留まらず、その応用、用途を考えようとするのか…でビジネスとしての一線が存在します。
これこそが、肉体労働と頭脳労働を分かつ一線なのです。新事業に挑むならば、ここが超えていくべき重要な一線です。
イノベーションを技術能力そのものに求めるのか、あるいはその応用に求めるのか…。
ちなみに、答えからお伝えすればこのどちらも大切なのです。ただし、それぞれを担う役割に違いがあるということを分かっておくことが大切です。
まず前提として、画期的に新しい技術そのものを研究開発するといったことは、例えば国や大企業での研究、専門の研究所で予算〇百億円、博士〇百人という規模に対して、これに中小企業で太刀打ちできるものではありません。
そこは現実として、我々には、これらとはまた違う得意な領域があるのです。既存技術に経験で培った現場力で一工夫して、お客様への一層の応用に活路を見出す意識が大切です。
お客様の近くにいて貢献するのが、我々の仕事です。お客様の混沌に直接的にお付き合いするのが、我々の仕事です。古いような技術、決して難易度が高くないと思われているような技術技能にこそ、まだまだ地に足の着いたビジネスチャンスがあります。
その持っている技術能力を、どのようにお客様のために応用するのか…、これこそが我々に求められている地に足の着いたイノベーションであり、頭脳労働の具体戦略なのです。
これまでに培った技術価値の上にお客様への工夫価値を加えていますか?
現有能力を高めつつ一工夫して、新しいお客様に応えませんか?