【第352話】営業活動が啓蒙活動になっている経営の失敗起点

「〇〇の魅力を伝えていきたいんです」といった主張を中心に据えた事業プレゼンを耳にすることが増えました。

 

例えば、地域の魅力、食材の魅力、伝統工芸の魅力…といったことです。経営者であれば、ああアレね…とお分かりいただけるものと思います。

 

いかがでしょうか? このこと自体、とても素晴らしいことであると思うのですが、大抵の場合、お話を聞いていて違和感が生まれてきます。

 

その違和感とは何かといえば、「本気で分かってもらおうなどと思っていない」という点です。もっと言えば、「あなたには分からないだろう」、「分かるはずがない」というスタンスでお話をされていることです。

 

面白いのは、これが事業プレゼンだということです。事業計画の磨き込み、新商品・サービスの企画開発、新たなお客様の獲得、追加の資金調達…といったことを目指す場であるということです。

 

この違和感の正体を追う前に、まずこういった主張を耳にすることが増えたのはここ10年くらいであって、それこそ20年前にはこういった主張を聞くことはまずありませんでした。

 

この「魅力を伝えたい」という主張の生れについて、時代を遡って考えてみようとすれば、ほんの少し前までは「知ってもらいたい」ということが言われていました。

 

この「知ってもらいたい」には、その先に「知ってもらえれば買ってもらえるかもしれない」という続きがあって、その主張はまだビジネスとしてのスタンスを保っていました。

 

つまり、「知ってもらいたい」まではビジネスとしての営業活動の体を保っていました。

 

ところが「知っもらいたい」が「魅力を伝えたい」にまで来てしまったことで、ビジネスの体裁が失われつつあります。

 

この「魅力を伝えたい」は、もはや啓蒙活動であって、商品サービスから対価を得るビジネスから、単なるボランティア活動へと外れてしまっています。

 

このため、こういった場面で、事業の存続発展のためにと何らかのアドバイスをしたところで、結局、返ってくる言葉はいつも同じです。

 

「儲からなくても良いんだ」と。この本心は「やはりあなたには分からなかったか」なのです。もう少し端的に言うならば、「なぜ、この魅力が分からないのか」、「あなたが間違っている」、「買わないお客様が間違っている」と言いたいのです。

 

この議論はとても厄介です。それは、「事業への取組み意義レベル」と「商品・サービスレベル」という異なる検討レイヤーの議論だからです。

 

お伝えしたいのは、取組意義の素晴らしさと商品サービスの魅力は違うということです。素晴らしい想いを持って創ったフツーの商品では商売にならないのではありませんかとお伝えしています。

 

自分たちの想いが正しくて、そのことを分かる人はほとんどいない…という思想に行きついてしまうにも理由があります。

 

それは、差別化、違い、独自性…といったことを追求しようとした結果、商品・サービスでそれらを生み出すことができなかったために、そのビジネスに取り組んでいる想い、背景的理由を“違い”にしようとしてしまっていることで起こります。

 

先ほどもお伝えしましたが、その想い自体は素晴らしいのです。ですが、経営者であるならば、その想いを採算に乗せるためのもう一段の創意工夫が大切です。

 

そういう意味で、その想いを対価性ある商品・サービスにまで表現しきらなければなりません。想いはひとまず腹の底に留め、それを商品・サービスで表現してこそ商売なのです。

 

差別化への渇望から、人とは違う…を演出する方法として、想いの違い、採算性の乏しいビジネスへの挑戦といった経営スタンスへと走りがちです。

 

しかし、商売である以上、お客様が間違っているという出発点から存続発展が有り得ないことはもう薄々お感じのはずです。まずはビジネスの勝負の土俵に戻ることが大切です。

 

経営を本気で採算に乗せようとしていますか?

独自性を“想い”ではなく“商品・サービス”で表現していますか?

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