【第340話】新事業はミッションにスピリッツを伴ってこそ実現できる

「地域発展のためにも、この新事業に挑戦していきます」と熱くお話くださる若い社長。プレゼン資料の中身の多くが社会課題や地域の問題、そういったことの分析から成り、この新事業に取り組むための背景、必要性が綴られています。そして、商品については1ページ。

 

「今のままの商品力では、なかなか商売として立ち行かないのでは…」とお伝えすれば、若い社長は、こう即答されます。「儲からなくてもいいんです」と。

 

何もボロ儲けしようなどとお伝えしているのではありません。少なくとも採算を創らなければ、事業を続けていくことが難しくありませんか…とお伝えしています。

 

ちなみに、経営は投資です。よって、ビジネスというのはおカネが先に手元から離れて後からリターンとなって返ってくるという構図になっています。そして、返ってこない可能性も十分にある勝負でもあります。

 

この若い社長の商品も、まずは設備を自社で持たず外部で委託製造してもらったとしても、その初期生産の最小ロット分の仕入れ支出があります。

 

そして、その商品が売れなければどうなるかということです。売れないという実情から追加の資金調達はどんどんと難しくなっていきますし、資金が尽きそうになれば、その在庫を安売りして延命、縮小しながらいずれ終わりの時を迎えます。

 

素晴らしい取り組み背景があるから、お客様がそれに賛同して商品を買ってくれる…などと思わないことです。そういった理由で得たおカネは商品販売の対価ではなくて、単なる募金にすぎません。

 

こういった、新しい計画に対する意識の何が間違っているかといえば、新事業に取り組もうとするミッションまでは良かったとして、「儲からなくてもいいんです」というスピリッツの部分です。

 

それをお客様が聞いたらどう思いますか…。「儲からなくていいんです」は、そんなに一生懸命になってどうするの…に聞こえてしまうでしょう。そんなソコソコの商品を誰が買おうと思いますかということです。

 

ミッションとは、何としてもこれをやり抜く、必死で達成していこうとする強い意志、精神性、スピリッツを伴って、初めてそう呼べる条件が整うものです。

 

高いミッションを掲げること自体が目的化している風潮があります。そしてこれは自分は商売や儲けのことなど無関係な世界に居るかのごとく振る舞うことが、あたかもカッコいいかのような姿勢を助長しています。

 

自社の活動が商売ではないなどというのならば、従業員や仲間、延いてはお客様を巻き込まないことです。ご自身一人のリスクでやればいいことです。

 

会社の活動は全てそこで生きる従業員の生活を守っていくためであり、そのためにも稼がなければならないのです。

 

稼ぐため、弾の飛んでくるビジネスの最前線に立たなければなりません。それなのになぜ、高いミッションと低いスピリッツという間違いが起こってしまうかといえば、その理由はシンプルです。

 

最前線で稼ぐことに疲れて、後方部隊としての仕事に下がりたいのですが、それを正直に言ってしまうとカッコが悪いので、高いミッションを掲げることで、最前線に立たない理由を創ろうとしているからです。

 

最前線における事業経営とは、お客様に対峙することです。お客様に「この商品買ってください」と説明してお財布を開いていただくことです。それは、お客様の面倒や無理難題を引き受けることでもあります。

 

これは、我々は素晴らしいことやってるので寄付を下さい…という、上から目線の営業トークとは根本が異なります。

 

高いミッションを宣言するのであれば、それに見合ったスピリッツを商品に込めることです。

 

素晴らしい社会背景から生まれた商品なので買ってください、などという痛くない募金活動は早々に辞めて、今一度、弾が飛んでくる最前線で痛い思いをするスピリッツを奮い立たせることが大切です。

 

新事業のミッションはスピリッツを伴っていますか?

お客様を向いて面倒を引き受ける覚悟ができていますか?

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