【第316話】下請脱却という成長脱皮の戦略ステップ

「ウチの会社は下請け根性が染みていて、なかなか変われないんです」――、と事業部長。そういった際には必ず「下請けの何が悪いんですか?」とお伝えしています。

 

すると、「はっ?」といった顔をされます。もちろん、弊社にお声がけいただいているのですから、社長は「何とか独自路線の成長に道筋を」との思いに至ってのことです。

 

そんな矢先に「下請けも悪くないのでは」と言われれば、「はっ?」となってしまうのも無理のないことです。

 

ここで、「下請けも悪くないのでは」ということの心は、世の中は合理的な分業で成り立っているという事実をお伝えしています。

 

これはある意味、下請けとは、単純に仕事における契約関係、取引系列における位置づけといったことでの分類に過ぎないということです。

 

では、なぜ下請が法律までできて保護の対象になっているかといえば、その契約の中で上側から無理難題を押し付けられる弱い存在とみなされていることに起因します。

 

実際、継続的な取引にあって、更新時には価格改定という名の値引きが強要されていたり、頻繁な仕様変更への対応コストが無視されていたり、検収支払い条件や入金サイトが厳しかったり、部品や在庫を預からされたり…といったことが耳に入ります。

 

そういった不条理を解消するために、経営者が団体を組んで議員さんなどに向けてロビー活動を展開していたりします。ところが、そういった努力が報われて法律やガイドラインが成立したとしても、実効的にはある意味で無力な領域が存在します。

 

それは、ビジネスにおいてリスクは憑き物であり、そのリスクは取引構造の上に行けば行くほど、巨大になるという構造にあるからです。

 

難しい話をしているのではありません。最終顧客に近ければ近いほど、競合他社との競争は激しく、新製品を企画開発したりその製造のために巨額の設備投資をしていたりと、上側は上側で大きなリスクを負ってビジネスに挑んでいるということです。

 

ちなみに、リスク、リスクと、危っかしくて、損失を生みそうで、何やらヤバい…といった印象をお持ちかもしれませんが、それは違います。

 

ここでいうリスクとは、事業機会の探求に伴うリスクであり、何もしないのならば何の心配もない。そういった類のリスクだということです。

 

これは言い換えるならば、こういった取引構図の中にあって、仕事の一部だけを代行として引き受けるのか、あるいは、リスクの一部も一緒に引き受けるのかの違いによって、その仕事は決定的に異なるものであるということです。

 

つまり、「受注仕様を満足しさえすれば検収してもらえる」というような考え方の場合、それは発注者に変わって労働を提供するいわば代行業でしかありません。

 

この場合、事業機会の探求に関するリスクを負っていないため、これは、下請け仕事ということになります。

 

一方、「発注者の負っているリスクの一部を一緒に負って、共に事業機会を探求する」という考え方をしていた場合、下請けなどではないパートナーとして、頼もしい存在ということになり得ます。

 

ではどのようにして事業機会探求のリスクを負うのかといえば、その答えは明快です。その事業機会をビジネスとして成り立たせるために、独自性ある開発投資を自らのリスクで行うことです。言われた製造を代行するのではなくて、自社看板の製品を開発するのです。

 

これはある意味で、下請けを脱してメーカー成りすることであり、例え小さな範囲であっても独自の切り口から専門性を見出し、“製品”と呼べる範囲を確立することです。

 

事業経営の世界において、リスクとリターンは世の常です。おカネが先に出て後から返ってくる。開発投資という種まきをするからリターンという果実を得られる可能性が生まれるのです。

 

ビジネスの世界、どう歩もうと、どうせ大変なのですから、目指す方向にあがいてみることを強くお勧めします。

 

その仕事にあたって、事業の機会を見据えていますか?

その機会獲得のために先行投資のリスクを負っていますか?

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