【第315話】次の一手を仕掛けたければ強みを独自性に転換せよ
「なるほど、よーくわかりました」、とあるコンサルティングファームのコンサルタントとお話ししていて、ご質問にお答えした際のことです。
そのご質問とは、「今、企業の復活力で二極化が進んでいます。今後さらに進むと思われますが、その違いは何だと思われますか?」というものです。
こういった議論をする際に大切になってくるのが、議論の軸を明確にしておくことです。
ということで、まずその軸を整理すれば、ここでいう“二極化”とは、新型ウイルスの蔓延で儲かるようになったビジネスと儲からなくなったビジネス、その違い…といった結果論的なことではないということです。
こういった時こそ、結果だけにとらわれず、その背景にある根本的な構造、成功法則、考え方といったことに意識を持っていくことが、長期の成長発展の鍵となります。
少し話はそれましたが、ここでいう“二極化”とは、ビジネスのもっと根本的な構造についてのことです。それは何かといえば、ビジネスの種類の違いです。
その種類とは、「請負受託型」のビジネスと「企画提案型」のビジネスです。
請負受託型のビジネスというのは、「こんなことできます」というビジネスレイヤーにあって、いわば実行能力をそのまま売っている類型です。
そして一方、企画提案型のビジネスとは、「こんなのいかがですか」というビジネスレイヤーにあって、ビジネス自体の開発を一定程度担ってから売っている類型です。
このため、請負受託型ビジネスの営業トークは「当社はこんなことできます」となり、企画提案型ビジネスの営業トークは「御社にこんなのいかがですか」となります。
このように、請負受託型と企画提案型では、営業トークの主語に、“当社”なのか“御社”なのかという違いが生まれてきます。
この営業トークの違いは、一見、表面的なこと、話し方の違い程度に見えるかもしれませんが、その根底には、ビジネス自体の開発をどの程度担っているかの違いという意味で、極めて大きいものなのです。
例えば、とあるサプリメントのOEM専門企業があります。この企業はOEM(顧客ブランドによる商品製造)ですから、商品の製造を顧客に変わって請け負っているため、請負受託型に見えます。
ところが実態はといえば、この企業は、お客様の製造代行に留まらず、サプリメント事業の立ち上げまでを提供しています。これは、企画提案型のビジネスといえます。
つまり、外から見れば同じようなビジネスであっても、経営の意識によって、その中身は決定的に違うということがお分かりいただけるものと思います。
今起こっている二極化とは、急速に経済需要が縮んだ中で、自分から動き出して次の一手を打ち出せるかどうか否かということです。
従前から、企画提案型で経営を考えていたならば、自社の能力を新たな局面へと応用展開し、新しい企画提案に仕上げて、世の中に打って出ることができます。
反対に、請負受託型で経営を考えていた場合、需要が吹き飛んでしまうと、自ら全く動き出せないということが起こります。
自社の強み、特長、違い…といったことを、自社の能力レイヤーで説明していたとしたならば、御社の経営はほぼ間違いなく請負受託型の意識にあります。
企画提案型ビジネスにおける提案とは、能力の提供にとどまらず、お客様企業の発展に寄与するための御社独自の切り口であり、その独自の視点が提案の核となるものです。
独自性とはビジネスの話です。それは「やり方」ではなくて「考え方」に宿るということを念頭に、次の一手を準備していく意識が大切です。
営業トークの主語がお客様になっていますか?
提案を独自の切り口、考え方で仕上げていますか?