【第277話】ビジネスの長寿・短命を分かつ売上の重さと成長度の関係

売上を急速に伸ばす企業が多くあります。実際、創業から9年で500億円超、創業8年で200億円…といった企業を存じ上げています。

 

あるいは、もう少し歩みが遅いように見えつつも、堅実、実直に売上利益を伸ばしている企業もあります。

 

もちろん、事業経営は経営者次第ですから、どのような成長の仕方であるべきかといったことではないにしても、確実にいえることは、成長に良し悪しがあるということです。そして、重要な問題は、そのことに経営者が気付いていないことです。

 

例えば、店舗への設備投資を実施して、その借入金を返済するためには、もっと店舗を増やしてスケールアップしていかないと追いつかない…、といったことが起こり得ます。

 

この場合、売上だけみれば、店舗の出店に伴って着実に増加していたとしても、自力が伴わず、店舗オペレーションの低下や安売り集客などで収益性を喪失していき、財務が悪くなっていく…といったことになります。

 

実際、約20年、経営実務という視点から世の中を見てきて分かったことは、売上には「軽い売上」と「重い売上」があるということです。

 

このことは、とても大切なことなので、あえて繰り返します。「売上には重さがある」のです。

 

ちなみに、F=m×aをご存知でしょうか。これは運動方程式と呼ばれるもので、「質量mの物体に力Fを加えると加速度aが生じる」という自然法則を現わしたものです。

 

同じ力を加えた場合、物体が軽いほどより大きな加速度を生じます。反対に物体が重いほど加速度は生じにくくなります。

 

ここで、運動方程式をビジネスに置き換えるならば、力Fは経営資源投入量、物体の質量mを仕事の難易度、加速度aを売上成長度と置き換えると、次のとおりになります。

 

経営資源投入量 = 仕事の難易度 × 売上成長度

 

この関係式を見て、どう思われますか? これは経営者であるあなたに「ヒト・モノ・カネといった経営資源の投入を、仕事の難易度の向上に使いますか、それとも売上の獲得成長に使いますか?」と問うているのです。

 

ある意味、経営者としてこれほど難しい意思決定があるでしょうか。極めて重要な経営意識であることは、お分かりいただけるものと思います。

 

これこそが、「売上の重さ」の正体です。売上1円がどのような「仕事の難易度」によって生まれているのかということの違いです。同じ経営資源の投入を行う場合、簡単な仕事ほどより大きな売上成長度を生じ、反対に仕事の難易度が高いほど売上成長度は生じにくくなります。

 

このことの意味は、経営者に次のような選択を迫ります。比較的簡単な仕事で広く稼いで売上の成長度を優先するか、仕事の難易度の向上を優先して売上の成長度は後回しにするか…。経営者として何に挑戦しようとしているのか…、根本姿勢が問われています。

 

御社の「売上の重さ」は、売上の成長を見ればすぐに分かります。売上が、直線的に伸びていて、従業員数、店舗数、契約口数…といった「数」に単純に比例している場合、その売上は「軽い」ままの成長といえるでしょう。

 

一方、売上が指数的に伸びていて、単純に「数」に比例していない場合、その売上は「重さ」を増しつつ成長しているといえるでしょう。

 

つまり、売上の重さ、仕事の難易度を上げながら成長している場合、付加価値、創意工夫の度合いが高まっているため、利益性、収益性が向上し、その利益の再投資で成長しているために、成長が途中から指数的で驚異的なものになっていくのです。

 

この売上の重さは、最終的にビジネスの長寿短命にも大きくかかわります。その理由は単純です。この経営姿勢が仕事の難易度、“重さ”に耐え得る組織筋力を育てるからです。

 

経営目標に数字だけを掲げる企業がご多分に漏れず世の中から姿を消すのはこのためです。軽い売上を労力でかき集めるのか、重い売上を創意工夫で目指すのか。最終的には、この意識の違いが企業の寿命を決定づけているということをお忘れなく。

 

売上の“重さ”を高めていますか?

売上拡大を急ぐあまり、“重さ”を置き去りにしていませんか?

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