【第251話】高収益はマニアの香り
「大手さんから突然メールがありまして…」、「同業者から話をしたいと連絡がありまして…」、「業界のご重鎮から会いたいと…」。顧問先やクライアント企業の経営者から、「どうしましょう…」というご相談をいただきます。
面白いもので、企業が独自性を発揮し始めると、こういったご連絡が確実に増えます。これは独自性発揮の証ですから嬉しいことではあるのですが、一方で相手様の本当の目的が分からないために、経営者としては「どうしましょう…」となる訳です。
簡単そうにも聞こえますが、こういったご連絡にどう対応するのか…というのはなかなかに難しい判断です。忙しい中で時間を作って双方の発展につながることを願ってお会いしたはずが、気分の悪い思いをすることになったりすることもあるからです。
要は、この相手様の目的が、答え探しの単なる「パクリ目的」なのか、ご自分たちが考える上でインスピレーションを求めた「ヒント探し目的」なのかということです。
「パクリ目的」の経営者とお会いしている時間などありませんが、「ヒント探し目的」の経営者ならば道は違っても同じ理想を目指す同士となり得る存在です。
実際、とある新サービスで経営を伸ばしておられる方の周りには、あっという間に一目でパクリと分かる新参がニョキニョキと現れています。一方、競合であるはずの業界のご重鎮からはエールが届いています。
ご参考までに「パクリ」かどうかを見極める簡単な方法があります。それは必ずオリジナルより「安い」ことです。「同じような製品・サービスなら安い方がいいでしょ」という訳です。
平気でパクる経営者というのは、自分たちが生きるためにお客様をバカにしていることに気付いていません。お客様が価格だけで買っているとでも思っているのでしょうか。そもそもお客様への提供価値を考えていないから価格にしか意識が及ばないのです。価値の付加で競争せず価格でしか競争できない。何とも情けない話です。
少し話は逸れましたが、そういった経験から、優れた経営者は商売の匂いを嗅ぎ分けます。このご連絡が双方にとってハッピーにつながるのか、あるいは面倒の種になり得るのか…、確実に嗅ぎ分けます。これ実は、お客様も同じです。
そして、お客様も一緒に、独自性を自分たちで考える本物は本物同士、平気でパクる偽物は偽物同士、それぞれの世界に棲み、どんどんと濃度が高くなっていきます。どちらの世界に棲むか…、どっちもが両立しないだけに極めて大切な意識です。
当たり前ですが、独自性商売というのは、自分たちで考えたから“独自”になっています。独自性を買ってくることはできませんから、独自性商売は「儲かるから、オマエのところもやってみたら」といったことで始められるようなものではありません。
ビジネスにおいて、独自性は“香り”の違いとなって現れます。「神は細部に宿る」といわれるように、様々な違いの蓄積が最終的には全体として一つの香りとなって現れます。
これを逆から見れば、独自性商売は香りが濃いために「欲しい・要らない」、「好き・嫌い」、「サイコー・キモイ」といったことがハッキリと分かれます。
でもこのことのマイナスを心配しなくても大丈夫です。なぜならば、ハッキリと自分たちのカルチャーを持った本物のお客様は他のカルチャーに対しても敬意を払うからです。
なぜその敬意が生まれるかといえば、それは、独自性の香りが、情熱によって到達したマニアックなアイデアによって出来上がっていることを知っているからです。そして、香りを出すほどのマニアックなアイデアはどれほど情熱を注がなければ生まれてこないかも知っているからです。
ですから、この香りは「要らないけど素晴らしい」、「嫌いだけどスゴイ」、「キモイけどよくやった」。例えカルチャーが違ってもこのように必ず肯定的な感情を伴います。実は、本物の独自性はカルチャーを進化させつつ、世の中へもたらすトータルの感情は常にプラスであり、それが独自路線の成長発展をもたらします。
心配は無用です。「好き・嫌い」を恐れず、情熱を注いで香り高きマニアックなビジネスを打ち出していくことが大切です。支払い意欲の高いマニアなお客様に、「払いたい」と言わしめるほどプンプンと香るビジネスを世の中はまだまだ待っているということをお忘れなく。
ご自身のビジネスに情熱を注いでいますか?
御社の独自性はしっかりと香っていますか?