【第221話】成長を味わえるビジネスチャンスの見つけ方
「当時、私の仕事はお客様とゴルフに行くことでした。そのお客様から○億円の仕事が流れてきていましたので、そのお客様との関係さえ維持していれば、それが続いていくものだと思い込んでいました」。
こう仰るのは、とある広告代理業の社長。お客様の業績低迷とともに、一気に売上が落ち込み、まさに「天国から地獄」を味わったご経験をお持ちです。
ビジネスを続けていこうと考えるならば、続けていくための努力が欠かせません。これは当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、結構、見落としがちなことでもあります。
そして、どう努力するかも大切です。お客様とゴルフ…も一つの努力だった訳ですが、それが努力の王道でなかったことは明らかでしょう。
「天国から地獄」を経験されている社長は、教訓的に「今が続いていかない」ことを知っています。ですから、考え方の根底に悪いシナリオに対する恐怖心をお持ちです。
経営者として正しく恐怖心を持っていることはとても大切なことです。ご自身の甘さに対するけん制になりますし、従業員に対しても許せること許せないことの線引きを際立たせることにつながるからです。
特に努力の仕方として大切になってくるのが、ビジネスチャンスをどうやって見出していくかという場合です。これは、経営者特有の仕事ですし、従業員に期待することなど到底難しい仕事だからです。
経営者であれば、常に次のビジネス展開を考えているものです。事業経営とは存続させていくだけでも大変な世界ですから、より一層の成長ともなればなおさらです。
このため、どういった市場や技術がこれから伸びていきそうなのか、お客様の嗜好性はどのように変化しているのか…といった世の中の変化を捉えていこうという性が染みついています。
この際、経営者としてビジネスチャンスをどう見るかは、不思議なほどにはっきりと「顕在化したニーズ」と「潜在的なニーズ」に二分されます。
既に見えている顕在化したニーズというのは、顕在化しているという意味において、もう既にあるということですから、ご自身で創ったビジネスチャンスではありません。
そして、見えているのにビジネスとして成り立っていない理由というのは、経済合理性が成り立たないために、ビジネスというアプローチで採算性が成り立たず、解決されずにいる問題だということでもあります。
こういったことは、いわば「市場の失敗」と呼ばれる市場で、一般に、法律で義務化されたり、採算を税金で補填したりすることで、はじめて成り立ちます。
この際、最も問題なのは、ビジネスが“社会的ルール”によって支えられているという点です。つまり、そのビジネスがお客様ではなくて制度に依っているのです。したがって、制度から安定的な売上がもたらされたとしても、反面、その制度自体が制約となり創意工夫による利益創出の余地は極めて小さいといえます。
一方、まだ見えていないけれど頑張ればビジネスにできそう…いわば潜在的なニーズに着眼して、それをビジネス化していくことは、売上を作るのは大変であっても売れさえすれば利益を生み出しやすいビジネスといえます。
そして、潜在ニーズのビジネス化は、社会的ルールや制度というよりは、“自然法則”に近いものです。このため、ビジネス化は、自分たちで自然法則を解いていくのに近い感覚です。
顕在化ニーズに対応して“社会的ルール”をお勉強して、売上にはなるが利益が出にくいビジネスに取り組むのか。あるいは、潜在的ニーズに賭けて“自然法則”を解いて売上で苦労しつつも利益が出せるビジネスに挑むのか。
自社に蓄積されていくノウハウが、社会的ルールの知識なのか、自然法則への理解なのか。既にあった市場に乗っかっただけか、自力で市場を切り開いたのか。永い目でみて、どちらが本物の成長を味わうことができるかは火を見るより明らかです。経営者として御社の10年後…、どちらを目指すかを意図しておくことが大切です。
潜在的なニーズに賭けようとしていますか?
社会的ルールではなく自然法則を相手にビジネスしていますか?