【第220話】成長発展に不可欠な価値創りの根本原則

「日本酒はお米削り競争になっている。ウチは3割削った、ウチは4割、ウチは5割、ウチはもっと削っている…と。これを続けていくとどうなるか。いずれ全部削ってしまって日本酒は水になる」と言うのは、斬新な日本酒の開発にアドバイスを行っている方。

 

もちろん、このお話はシュールな冗談で、実際には削った分だけ多くのお米を使ってお酒を造るので、削る割合を高めたからといって日本酒が水になっていく訳ではありません。

 

要は、「新商品開発を他社と「同じレールの上」でやっている時点で、開発の進め方としていかがなものでしょうか?」と仰っているのです。

 

確かに、どんな商品にも、時流、流行り、トレンド…といったことがあって、新商品開発を進めていこうとすれば、そういった大きな流れを認識しておくことは大切です。

 

ここで大切というのは、それをどのように参照するのかという、こちら側の受け止め方が極めて重要ということです。

 

実際、トレンドを自分たちで考えるヒントとするか、便乗しようとするかによって、たどる道筋が全く違ったものになってしまうことは、簡単にお分かりいただけるものと思います。

 

当然のことながら、出来上がるビジネスも全く違うものに仕上がります。例え結果的に表面的には似ているように見えたとしても、開発のプロセスが違えば、必ず違うものが出来上がります。

 

不思議なもので、流行りに便乗しようとしていることはすぐに分かります。本質的な機能部分において価値の程度がオリジナルより劣るからです。その理由は簡単です。コピペ商品ですからオリジナルを超えていけないのです。

 

そして、価値として劣るため、同程度の価格帯では売れていかないと分かっているので、オリジナルと比べて極めて安価に設定されます。

 

このコピー商品の価格はオリジナルの半額程度と相場が決まっています。これは、「2~3割程度お安いだけであれば、お客様は本物やその中古の方を買うだろう。しかし半額ともなれば、コピー品と分かっていてもこっちを買う人がいる…」という経験的に編み出してきたことなのだと思われます。

 

お客様は値段と釣り合っているかどうかを判断します。“欲しい”と思って探していたお客様は、半額のコピー品であっても機能面で本物の半分ということはないだろう…と、本物を基準にして比較のロジックが成り立ってしまい、結果として、半額のコピー品を買ってしまうことになってしまうのです。

 

こういった商売は、本当にお客様のためになっているのでしょうか。「本物の半分以上の機能を持った商品を半額で売っているんだから何が悪い、むしろリーズナブルだ」とお天道様に向かって言えるでしょうか。特に、その仕事に“携わらされている”従業員が可哀そうでなりません。

 

世の中の情報は、「オリジナリティ」を考えていく上での“ヒント”でしかありません。世の中で起こっている症状を見るのか、兆しを観ようとするのか。オリジナルだと胸を張っていくためには、自分の側に基準を置いてビジネスを焼き直ししていく努力が大切です。

 

大変尊敬申し上げており、苦労してオリジナルな事業を立ち上げられた社長から、夜半にメッセージがありました。「易経では時流に乗るなという考え方がある。善しとするは時中である」と。

 

こんな時間までひたすら考えておられるのです。「もう見えてしまっている流行りに便乗するようなことはしない。自分たちで考えて時の本質を突きにいくぞ」と仰っているのです。

 

オリジナルな経営は、先取りしているという意味において一種のリスクではあるのですが、それがいずれ自社の使命としてやらなければならないことであったならば、多少の時間の前後はあったとしても、いずれ当たるビジネスだということができます。

 

本当の意味での商売、お客様に価値を提供するというビジネスにおいて、「オリジナリティ」は絶対に不可欠なことです。ご自身で考えれば、必ずオリジナルなものになります。新事業構築、新商品開発というのは、いわば「オリジナリティ」の開発であるということについて覚悟を決めておくことが大切です。

 

時中意識で開発にあたっていますか?

考えて見えてきた「オリジナリティ」に賭けていますか?

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