【第215話】経営進化の判断軸

「お客様のところに、値上げのお願いに伺っているんです」と、とある企業の経営者。これを聞いて、「うらやまし~」と思った経営者も多いはず。実は、これができる企業とできない企業は、経営姿勢によってあらかじめ決まっています。

 

もちろん商売はお客様あってのことですから、販売が成り立つというのは、決して一方的なことでは有り得ません。そんな中にあっても、価格の決定権をある程度自社側で握るためには、ある種の努力が必要です。

 

これができていないから「うらやまし~」が生まれます。これは構造的なことですから、その根本にある何かを変えない限り、待っているだけで「うらやまし~」が消えるということはありません。

 

では、「今後、御社の商品・サービスの価格は上がっていきますか?」と聞かれたら、どうお答えになられるでしょうか。これは「はい」と即答できる企業と、「そうしたいのは山々なんですが…」とお茶を濁す企業とに、ハッキリと分かれます。

 

つまり、価格に一定のイニシアティブを持って商売を展開できている企業と、追従者となっている企業です。

 

なぜ、そのような違いが生まれるのかといえば、論点は単純です。商売として「価値」を売ろうとしているのか、「価格」で売っているのかの違いです。

 

一昔前、マーケティングの世界では、「トップシェアが価格を握る」とか、「シェア20%超えで価格イニシアティブを獲得できる」といった、市場シェアで価格の決程権を握れるかどうか…といった考え方がなされていた頃がありました。しかし、今は違います。

 

なぜ違うのか…、その理由は簡単です。商売の前提が違うからです。今の時代、大抵のモノは足りてるのです。単にモノやサービスが提供できるというだけで売れる時代ではありません。

 

同じように見える商品・サービスであっても、付帯機能、デザイン、提供方法、アフターサービス…、その取引全体を見れば、様々な工夫がなされています。

 

そのわずかな”違い”を生むために必死で考えて付加価値を創ろうとしている企業と、他社と同程度のモノ・サービスを安価で売ろうとしている企業の違いが、価格の決定権に影響します。

 

価格を上げていける企業というのは、一つ一つは例え小さな”違い”であっても、その創意工夫を積み上げていくことへの覚悟を持って、事業に取り組んでいます。創意工夫で「価値」を上げていくことが、お客様にとっても自社にとっても双方の利益につながることを知っているからです。

 

一方、安売りで価格を上げていくことができない企業というのは、利益を「手数料」だと考えています。ですから、安売りは自分たちの取り分としての「手数料」を下げているのだから、これは善意だ…と勘違いしているのです。

 

しかし、この間違った善意に未来はありません。その理由は極めて単純です。この手数料が生まれているということは、自社以外の第三者が生んだ創意工夫による付加価値からこの手数料を頂戴しているに他ならないからです。要は、そのビジネスは「他人のフンドシで相撲をとっている」に過ぎないということです。

 

もちろん、適性で合理的な価格はお客様にとって良いことです。しかし、新たな「価値」を生む創意工夫を怠り、ただ単純に「価格」訴求で経営していくのでは、同じような商品・サービスを取り扱っていたとしても、全く異なる商売だということです。

 

成長を目指す際に打ち手が限られているという意味で、安売りビジネスは商売として致命的な欠陥を抱えています。

 

価格訴求の経営は、後は階段を下りながら集金的な薄利多売を拡げていく以外に道が無いという欠陥です。

 

その欠陥は、経営者の意識に起因します。だからこそ、経営の向上を測っていくことが大切であり、その際、「売価」が上がっているのか、下がっているのか…を意識していくことが大切です。

 

御社の利益の源泉は「付加価値」ですか「手数料」ですか?

長期的に「売価」を上げていける創意工夫を目指していますか?

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