【第195話】ビジネスを劇的に進化させる商品・サービス以外の重要要素

表側からは同じような商売に見えても、その中身というのは企業や事業によって、良くも悪くも「極めて大きな違い」があります。

 

例えば、同じようにみえる野菜の販売場であったとして、これを仕入れて売っている小売店と委託販売で売っている販売店では、その収益構造が全く異なります。

 

仕入れて売っている小売店は、店主が良いモノを目利きして品揃えしているので、商品力や鮮度が高かったりするのがウリかもしれません。仕入れすることによって、売れるまで在庫になったり売れ残ったりということで、仕入れ代金の全額が売上に転化できないリスクを負うことになります。

 

こういった在庫リスクを負う一方で、一旦仕入れれば自分の野菜ですから、その値付けは店主の裁量によるところとなりますし、その野菜を漬物にして販売するといったアレンジも店主によるところとなります。つまり、一定の在庫リスクを抱えるものの、店主の商売の自由度は高いといえます。

 

一方、野菜を委託販売している販売店の事情は異なります。生産者が袋詰めして値段を付けて販売場に並べて、それが売れればその売上の数%が委託販売店に入ります。そこから販売に係る設備費や人件費などを差し引けば、それが委託販売店の利益ということです。

 

委託販売店では、より良い商品をより安い価格で置いていってくれる生産者を探したり、もっと売れるように陳列を工夫したり…といったことで、販売を伸ばす工夫をするわけですが、商品自体の包装や値付けといったことは、あくまでも生産者に対するアドバイスであり、最終的に決めるのは商品を納める生産者という構図にあります。

 

商品を仕入れてくる訳ではなく在庫のリスクを負わないため、古くなってしまったりといった商品ロスの心配はありませんが、反面、今日の品揃えや売価などについて決定権がないという意味において、商売としてのもどかしさが残ります。

 

このように、同じように見える野菜の流通販売業であっても、そのビジネスの建付け次第で、収益構造には極めて大きな違いが生まれます。

 

そして、こういったビジネスとしての建付けが、表面から見える商品・サービスといった部分と一対となって、ビジネスが出来上がっているということをどうも忘れがちです。

 

流通業だけでなく製造業においても収益構造は多様です。工場を持たない製造業、いわゆるファブレス企業。有名なところでは、ファミコンで一世を風靡した任天堂、パソコン周辺機器のエレコム、計測機器のキーエンス、そして、みなさんの身近であればiPhoneのアップル社など。

 

最近では、一人でメーカーを立ち上げて「一人メーカー」という事業モデルまであるくらいです。

 

このファブレス企業群を見てお感じのことと思いますが、企画開発に力点を置き付加価値の創出に注力されています。商品が新しい分だけアタリ・ハズレも大きいことを考えれば、製造設備を抱えてしまうのは怖い…、よって製造は外注・OEM…、簡単に言えばそういった事業モデル・収益構造になっているということです。

 

日本人は、事業というと、とかく野菜屋、ネジ屋など取扱い商品であったり、流通業、製造業など機能で事業を説明しがちです。

 

確かにそれはお客様への説明として分かりやすいかもしれませんが、経営者であるならば自社の商品・サービスを考えるに留まらず、収益構造をどう創っていくか…について考えていかなければならないのです。

 

収益構造の違いこそが商品・サービスにも勝る事業の根本的な違いであり、舵取りが難しい時代、事業経営におけるリスクの取り方の現れだということです。

 

高収益の実現には、商品・サービスの開発と同時に、収益構造の設計が不可欠です。しっかりと商売を成り立たせている経営者というのは、例え表からみれば昔ながらの商売をしているように見えたとしても、時代とともに収益構造を更新されているものです。

 

なかなか売れない時代、リスキーな時代だからこそ、リスクテイクに対する考え方、収益構造の建付けをしっかりと考えておくことが大切です。

 

収益構造の更新に取り組んでいますか?

リスクテイクに見合った事業の建付けになっていますか?

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