【第17話】色鮮やかに新事業を開始するための条件
仕事柄、多くの事業計画に触れます。商品・サービスの特質、準備・開発に要する期間、資金調達規模等々、中身はとても様々です。次なる打ち手をどうするか。。。浅い深いの差はあるものの、皆様とても真剣に考えておられます。
日本国内を考えれば基本的にモノは足りています。ですから、新たに何かを売っていこうというのはとても大変な事です。しかし、そういった状況にあっても、多くの経営者方は状況変化に対応しつつ、不屈不撓の精神で新たな取組に挑戦されています。
事業立ち上げプロジェクトは、とても「多様」で「個性的」なものです。ですから、事業開始に向けたプロジェクトの進め方も実務的には様々です。この過程でどれだけ真剣に考えて具現化に挑むかで、その後の収益性ポテンシャルが決まってくると言っても過言ではありません。
ただし、これまでの経験から申し上げますと、事業立ち上げプロジェクトの進め方にはパターンともいえる成功しやすい「型」があります。そしてその型を念頭に進めることで、事業はだんだんと色艶を増していくことができます。どんな仕事でも“勘所”を押さえなければいい結果は期待できません。
新事業のお話をお伺いしたり、事業計画を拝見しますと、とてもカラフルで色鮮やかなものがあります。一方でモノクロなものも。。。その違いは何なのでしょうか?
それは“事業(ビジネス)”がイメージできているかどうか。つまり、お客様の買う姿が透けて見えるかどうかという点です。
売るという行為は、ビジネス上では「これまでの努力の現金化」を意味します。いくら努力してもお客様が買うと言ってくれなければ現金化することはできません。それまでは“努力の在庫”でしかないのです。
もちろん、在庫になるから努力しても無駄だなんてことを申し上げたい訳ではありません。ここでお伝えしたいのは、「商品・サービスが出来上がることと、ビジネスが出来上がることは違う」ということです。
では、どういった条件が揃うとビジネス化されているといえるのでしょうか。整理すれば当然の条件の様に見えますが、是非、改めて御社様の状況を確認してみてください。
- ビジネスの核となる技術・ノウハウへの着眼が良い
- それを組織能力でお客様の価値に転換している、売りモノ化している
- 値付けが適正である
- さらに、お客様が買いやすい販売の方法・場所・時間が準備されている
- そして、お客様に届く広告手段が考えられている
つまり、ビジネスの流れ、現金化までの流れが整っているかどうかです。これはいわばビジネスの縦糸になります。
そして、資金調達を含めて事業計画という視点からも必要な条件があります。
- 目指す未来像について独自の見識を持っている
- 自社事業の社会的意義を説明できる
- 利益計画として定量化・情報量化されている
- 実行チームが整っている
- 加えて、重大なリスクが認識されている
これはいわばビジネスの横糸です。なぜこの事業に取り組むのかという思いや、資金面、人員面といった実行に欠かせない資源配分のシナリオなどが整うことで、初めてビジネスとしての現実味を帯びてきます。
この縦糸と横糸が織りなす独自性こそがビジネスを色鮮やかに醸し出します。御社にしか編み出すことのできないカラフルで色鮮やかな深みのある立体感です。
ビジネスを立ち上げていくとは、調査や分析といった論理的な面が強調されがちですが、極めて科学的に行う人間味のある創作活動なのです。
御社の新事業は縦糸と横糸を編み込めていますか?色鮮やかに独自性を放っていますか?