【第16話】新事業を成功させるために必要な準備とは
新事業進出とは、既存事業を動かしながら、一方で新たなビジネスの全体を整えていかなければならないという離れ業です。
大抵の場合、社長お一人で考え始め、茨の道と覚悟の上で挑戦への腹を決めておられます。当社へお声がけいただくのは、温めてきた、寝かせてきた、これをいよいよ事業化していこうというタイミングです。
こういった挑戦レベルは、人員、関係先、投資規模も大きくなりますので、成功に向かってしっかりと準備し、儲けを生み出す仕組みを作っていかなければなりません。事業を企てるにあたって最も大切な事は?と聞かれたら何とお答えになるでしょうか。
こんなご経験はありませんか?
最初はこの事業でもう一段上の成長発展を目指そうと考えます。そして、事業の方向性を見出しつつ必要な準備を始める段階に入ります。
準備を進めつつその市場の現実を知るにつれて、技術的課題に直面したり、先行する企業や商品があったりで、思ったほど簡単ではないことに気付き始めます。しかし、全く勝ち目が無い訳ではないので、先ずはやり始めることを目指して更に準備を進めていきます。
そして、その過程で諸々の困難にぶつかっていく間に、販売を拡大し儲けていくための準備はどんどんと後回しになり、事業開始・販売開始そのものが目的化していきます。販売拡大への準備が不十分であることは薄々感じながらも、販売してみなければどれだけ売れるかどうせ分からないのだから。。。と言い聞かせるようになります。
そして、実際に販売を開始する頃には、その新商品を売る事よりも、そのプロセスで苦労して学んだ事や努力に満足し始めたりします。この頃には世の中に一石を投じてしっかり儲けると考えていた初志はどこかへ置き去りにされてしまいます。
勘の良い皆様は私のお伝えしたい事に既にお気づきになっていると思います。事業を企てるにあたって大切な事は、しっかり儲けるという初志を貫徹しながら新事業の準備を進めなければならないということです。
では、新事業を成功させるための準備をしていくにあたって、前述のような思考パターンに陥ってしまわないようにするには、どうすれば良いでしょうか。
実は、それほど難しい事をやる訳ではありません。そして、何かやるべき事を増やす訳でもありません。
準備の手順を意図的に工夫するだけです。
売りモノ開発→販売開始→儲ける という流れを、
売りモノ開発→販売開始←儲ける という手順で進めます。
売りモノが開発できないと販売が開始できないので、だんだんと「売りモノを開発して販売を開始する」ところに意識が寄っていてしまいます。しっかりと利益を出せる事業を創り上げることが目的だったはずです。「儲ける」という結果から逆算することが不可欠です。そのために販売開始に向かって「売りモノ開発」と「儲ける」から挟み撃ちにして事業準備を進めるのです。
今の時代、売りモノと売り方の開発は一体でなければなりません。事業によっては売り方から逆算して商品を開発しなければならない事さえあります。
販売開始時点で勝算をイメージできないまま、手探りの販売活動で走り出せば低空飛行間違いなし。手元現金残高の恐怖と戦っているうちに、成長拡大への思いは忘却の彼方へと消え去っていくことになってしまいます。
当然の事ですが、本当に売れるかどうかは、やってみるまで分かりません。しかし、やってみなければ分からない、にもいろいろなレベルがあります。これが勝算です。
勝算を高めるためにやらなければならない事は「考える」ことです。損益計算などを通じて儲けのシミュレーションを深め、販売拡大の道筋や手順を含めて具体的な打ち手を準備していきます。販売不振リスク、下方リスクを減らしていくことで勝算が高まっていきます。そして同時に高収益を叩き出していくための構え方、心の準備が整っていきます。
しっかりと儲けを出すためには、それに相応しい振る舞いが必要です。その振る舞いをイメージできるようにしていくためにも「儲ける」からの逆算で販売開始を迎える必要があるのです。
御社の新事業は「儲ける」から逆算して勝算が見えるまで考え抜いていますか?