【第144話】下請けを脱却して利益性を高める技術力の使い方

数十億規模で商いを展開している中小製造業で良く耳にするのは、売上よりも利益。利益が出にくい、低収益構造というお話です。

 

特定の技術力や実績があるため、お客様からの外注先という機能的位置づけがあり、取引先として、ある種の系列的な取引構造の中に組み込まれています。

 

よって、受注や売上はあるものの、価格の決定権が握れないことで利益が出にくいという、いわゆる下請け構造にあえいでいるという状況です。

 

つまり、せっかくの技術力が売上高にはなるものの利益につながらない…。

 

そういった中で検討される新事業が、エンドユーザー向けの自社製品の開発です。この方向性に向かって大いに頑張っていただきたいのですが、多くの企業がこの取組で失敗を繰り返します。

 

この失敗を構造的に超えていくのは、技術力ではなく考え方です。その点に考えが及べば、その他大勢から一気に抜け出せる可能性が高くなります。

 

こういった状況を、身近なパソコンで例えたならば。

 

その昔、パソコンが出回り始めた頃、パソコンはタダの箱でした。電源を入れるとモニターにカーソルが点滅するだけ…といったものでした。

 

そのパソコンで、BASICなどのプログラミング言語のソフトを動かし、その上でプログラミングして初めてパソコンは動いてくれるというものでした。

 

つまり、特定の言語でプログラミングすることが、「パソコンを使う」ことでした。

 

ところが今はどうでしょうか。電源を入れればWindowsなどのOSが自動で起動し、その上で、電子メール、web閲覧、ワープロ、表計算、プレゼン、写真編集…といった“用途”に応じたソフトを動かしています。今はこれが「パソコンを使う」ということです。

 

この“用途”に応じて作られたソフトウエアである「アプリケーション」の意味は、応用とか、実用化といった意味です。

 

つまり、今「パソコンを使う」とは、「“用途”に応じてアプリケーションを操作して、自分のやりたいことを達成すること」です。

 

ですから、アプリケーション(ソフト)を選ぶ、購入するというのは、何らかの達成したい結果があって、その結果を手に入れるために購入するということです。

 

ものづくり企業の多くは、製品までは作れる技術力を持ってはいるものの、売れていくまでを企画するチカラが弱いところがあります。弱いというよりも気付いていないとでも言うのでしょうか。作るまでが自分たちの仕事…、という長年の感覚を超えて、売れるまでを考えていかなければなりません。

 

ではでは早速。そのご自慢の新製品は、次の質問にどう答えられるでしょうか。

 

○その製品はお客様のどんな“用途”で使用されるモノでしょうか?

○その“用途”で使用した際、得られる結果はどう変わりますか?

○その製品でその結果を得るための使いやすさ・難易度はどうですか?

 

お客様にとっては、その製品が欲しいのではなくて、その製品を使った結果が欲しいということです。そこのところまで理解して、製品を開発し、テスト結果などを踏まえて、しっかりと説明できるところまで準備しておくことが大切です。

 

「ゴザ」を単に敷物として売るのか、「雪上での滑り止め」として“用途”を付して売るのか。その“違い”は小さいように見えてとても大きいのです。

 

御社のその新製品の“用途”は何ですか?

その新製品でお客様は欲しい結果を手にすることができますか?

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