【第14話】中小企業が開発力・販売力を同時に強化する方法

中小企業は開発力と販売力が弱い、と言われます。従業員に占める「開発」従事者の割合は、大企業で6%程度、中小企業で3%程度と記憶しています。いくらなんでも大企業と比べられちゃしょうがない、とのご意見が聞こえてきそうです。

 

では、しっかりと業績をあげておられる中小企業はどこが違うのでしょうか?

 

例えば製造業の場合、「開発」、「製造」、「販売」を企業内の3大機能として捉えることができます。

 

このうち、「開発」と「販売」が弱いと言われるということは、「製造」はそれほど劣っていないということになります。つまり、中小企業はこの「製造」が組織機能や儲けの中核になっている構図といえます。

 

しかし、何やら疑問も沸いてきます。「開発」しないで「製造」できるのか。「製造」したはいいが「販売」が弱ければ在庫の山になるのではないか、と。

 

この答えはとても簡単です。受注生産、受託生産しているからです。「開発」企業からの発注で製造し、販売しています。よって、売れるのが先で作るのが後なので、在庫は積み上がりません。

 

もちろんすべての企業がそうという事はありません。中小企業の多くが、この「製造」という部分機能に特化して存在している、という平均像をお話しています。

 

これは、作るモノも、作る量も、そして売れる量も、自社で決めることができない状況と言えます。この状況を言っているのが、中小企業は「開発」と「販売」が弱い、なのです。

 

「スマイルカーブ」という概念があります。生産プロセスの上流側から「開発」、「製造」、「販売」と横軸に並べ、縦軸に「付加価値」を据えます。そうすると付加価値は「開発」で高く、「製造」で低くなり、「販売」でまた高くなります。この線が下に凸の二次関数のような形で、笑っている口元の様に見えることから、スマイルカーブと呼ばれています。

 

スマイルカーブの考え方を参考にすれば、業績を伸ばそうとした場合、「開発」か「販売」の能力を強化すれば良いということになりますが、では、どのような手順で強化していけばよいのでしょうか。

 

自社の設備に生産余力があったり、在庫がある場合は、先ず「販売」強化に取り組んでいくことになります。販売強化によって現有設備を収益化していくことを考えなければなりません。

 

しかし、この「販売」強化の方向性は、長く続かないことを知らなければなりません。今売っている「生産」能力は、ライフサイクルの長短はあれ、いずれ陳腐化していくからです。よって、いずれ「生産」能力の質的・量的な向上に取り組んでいかなければなりません。

 

一方、「開発」が自社にある企業は“メーカー”と呼ばれます。開発が自社にあるということは、製品仕様や売りモノがある程度手の内にあるので、生産や販売まで含めて経営の裁量は格段に上がります。

 

当たり前の事ですが“売りモノ”が無ければ売ることはできません。「販売」強化は必要ですが、売りモノを作る「開発」への取組が長期的視点から不可欠なのです。

 

大企業同士の新規取引の現場で、製品の仕様説明だけで終わるということはほぼ皆無と言っていいでしょう。基本的に営業担当者は客先企業への導入メリットを「提案書」という形で準備します。今の時代、これが買い手側から見て検討のまな板に乗せるための最低限の要求事項になっています。

 

一方、中小企業の新規取引開拓の現場はどうかというと、製品の説明に終わっている場面が多く見られます。買い手側の導入インパクトを提案できていないため、「勉強になりました」と言われて帰ってくることになってしまうのです。

 

「販売」の場面で必要不可欠なセールストーク。これも「開発」時点から製品に埋め込んでおかなければ、後付けで作るのはなかなか至難の業です。

 

多くの中小企業が自社での企画「開発」に取組み始めています。自社内でゼロから価値を生み出し、自社開発努力で獲得する最初の売上1円を追い始めています。もちろん、営業の現場でも“製品説明書”ではなく“提案書”を作り始めています。

 

御社は商品の企画「開発」に取り組んでいますか? そして商品を顧客への「提案」に仕上げていますか?

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