【第129話】知識力を活かす社長と残念な社長の違い
経営を伸ばそうと考えれば、知識はチカラです。成功確率を上げてくれると同時に、失敗確率を下げてくれます。
ですから、社長方は、本を読む、セミナーに出かける、知人社長の下へ勉強に訪れる、懇親会で話を聞く……といったことに旺盛です。
しかし、経営という答えなき世界にあって、そこで得た知識がそのまま役に立つはずなどないことは、容易に察しがつきます。
では、どのように知識を活かしていけば良いのか――。経営を伸ばす本物社長は、知識そのものもよりもその活かし方に違いがあります。
本物社長の方々は良く「本業」という言葉を口にします。もちろん、事業を拡大していけばその事業領域は自ずと広がっていきますので、「本業」の捉え方が変わってくることはあります。
ここでいう「本業」とは、自社の核になっている部分ということです。
まず、少し考えればすぐに分かることですが、経営を伸ばすために大切なのは「商売になるほどの深い知識」だということです。
「本業」を大切にされるという本当の意味は、「深い知識の獲得には時間がかかる」ということに対する認識です。
ですから、どこかに軸を置いて、それを中心にその周りを含めて掘り進めていく。それが核となり、その企業の強さになっていく――至極当然のことを徹底しておやりになられています。
「本業」意識とは、その徹底度を高めていくために絶対的に不可欠な意識であり覚悟なのです。
一方、残念な社長は、知識に対する捉え方を間違えます。もっとも根本的な間違いは、知識を「儲け話」や「答え」だと思っている点です。
例えば、さっき聞いてきた話が、すぐに売上・利益になるとすれば、それは単に「儲け話」に乗っただけのことではありませんか?
あるいは、聞いてきた話が素晴らしかったので、ウチもその商品を売っていこう。こういった話も、単に他者のビジネスに乗っかっているだけではありませんか?
これらは、断じて真のビジネスではありません。仮に「業」だとしても、これらは単なる「副業」であって、ビジネスの“顏”をしてはいても、構造的に見れば雇われているのと変わりありません。
こういった入口からビジネスに乗った場合、最大の問題はいつまでたっても「本業」になり得ない、ということです。いくら時間を費やしても積み上がっていくものがないのです。
もう少し、厳しいお話を続けるならば、いつまで頑張っても、仮にその世界で1位になったとしても、所詮、他人が作った居場所だということに変わりはありません。
こういった入口から入ってしまったビジネスは、例え採算責任が自社にあったとしても、事業経営ではないのです。
本物社長は得た知識を本業へ「応用」しようとします。一方、残念な社長は得た知識にそのまま「乗ろう」とします。もう少し補足すれば、本物社長は「考え方」として、残念な社長は「やり方」として知識を捉えています。意識の階層が違うのです。
この意識の差を長年続けていくとどうなるか。本物社長はどんどんと高みへと昇り、強さを発揮していきます。一方、残念な社長は浅く広くなっていくので、いずれ負けていきます。
本物の成長を目指すならば、ビジネスの入口は例え小さかったとしても、ご自分で創ることが不可欠です。入口を間違うと後から“やり直し”は効きません。
知識を本業に「応用」しようとしていますか?
自社の居場所は自分で創ろうとしていますか?