【第104話】強い新事業を生み出すために欠かせない真の目的意識

新事業の立ち上げとは、新たな売上・利益を創り上げることを目指した一種の研究開発です。研究開発ですから「考える」ことが中心の取組みであり、難しさの根元でもあります。

 

新事業の開発において、結果目標としては売上・利益であり、特に利益、収益性、投資リターンを重視するよう常々お伝えしています。

 

そう言いますと何やら儲かればよいのか。。。といったご意見が聞こえてきそうなので、補足すれば、成長発展を維持するためには一定の収益性水準、期待リターンが欠かせません、という事業展開にあたっての基礎的かつ根本的な原則を申し上げています。

 

もっとも、売上・利益は結果的な目標なのであって、新事業の目的はもっと深い意義を持ちます。

 

事業とは、自社の使命・役割を果たしていくことで、世の中やお客様に貢献し、その結果として利益を得ていくという一連の活動です。

 

ですから、新事業を考える場合には、現有能力や既存事業との関係で、貢献領域を拡大したり、深堀したりしていくという着眼が欠かせません。

 

「新事業はゼロベースで発想すべきであって、既存事業や能力制約などに影響されるべきではないのではないか」といったご意見も頂戴します。

 

これは出資といった選択的な立場から新事業を見るのであれば妥当なご意見かと思いますが、ことご自身の組織で事業を経営されていくという当事者の立場から考えれば、全く現実的ではないことは明らかです。

 

一定の高収益、投資リターンを目指すためには、自社が中核となって事業を構築していくことが不可欠です。中核となり采配を振るっていくことを目指しているのですから、その能力領域で優れていることはとても大切なのです。

 

“強い”新事業を立ち上げていこうと考えれば、“永く”という視点が欠かせません。これは、考え方というよりはむしろ絶対に続けていくという「決意」とか「覚悟」に近い感覚です。

 

思いついた新事業をやみくもに展開するならば、たまにはパッと咲くこともあるかもしれませんが、すぐに散る。。。こともまた真実でしょう。これではまるでイベントであって、事業とは呼べません。

 

永く続く事業を開発していこうと思えば、小手先の手段レベルの思い付きや抜け穴狙いのサル知恵的な発想はきっぱりと捨てて、組織能力を起点としつつ、既存の事業領域を拡大させていく視点で、新事業を着想することこそが重要です。

 

つまり、強い新事業を立ち上げることは、永く続けていくことを目指すことであり、そのためには、資本サイドに拠らず、事業サイドの現実ベースから出発して、組織能力を起点に考えるという地に足の着いた進め方以外に道はありません。

 

経営者とは仕事を創る人であって、仕事を探す人ではありません。在りモノの仕事を探してきて、対応処理を従業員に指示する。。。といった仕事探しスタイルは、足りない時代には通用したかもしれませんが、足りている今の時代には難しく、仕事開発スタイルへと変えていくことが肝心です。

 

会社の未来を切り拓いていくために、仕事を創っていくことが不可欠であるという現実は、強烈であるが故に、目的設定を見誤らせてしまうことがあるのです。

 

もし、社長殿が「会社を存続させていくために、新事業が必要。。。」といった文脈でお話しをしたら、従業員はどう感じるか、ということです。会社のためは分かるけど。。。になってしまいませんかと。

 

では、どう伝えれば良いか。「従業員の未来のために、私は○○という新事業をやっていく」と伝えるべきです。これは、経営者ご本人が会社の未来を拓く売上・利益にコミットしているという宣言でもあります。

 

新事業構築という仕事は、人間が持つ成長意欲を満たすものであり、元来楽しいはずのものです。新事業への取組という難渋が、面倒事となるか自分事となるかは、経営者の目的意識次第です。

 

御社では組織能力を起点にして新事業を検討していますか?

新事業の目的意識を「従業員の未来」に置いていますか?

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