【第549話】ブーム後の破滅に翻弄されない経営構築
「トランプ関税で世界中がヤラれてますよね」と社長。こうした政治的な駆け引き、公正な実力競争以外の要因によって、これまでにも多くの産業が潰されてきました。
経営者がこうした歴史に学んでおくべきことは、政治的・社会的な変化が自社の経営に影響を及ぼす…ということです。例えそれが正しいと思えなかったとしても…です。
世界の主要国の政治が我々の経営にも大きく影響を及ぼします。それは、経済のグローバル化が進んでいる今、メリットと共にデメリットも受け入れなければならないことです。
それは、電車の相互乗り入れが便利さを生む一方、遠方でのトラブルでこちらの電車まで止まってしまうことと似ています。
世の中が様々な考え方を持った人々の営み、社会的な仕組みによって形成されていることを考えれば、それは多くの人々を幸せにするために仕方ないことと考えることもできるでしょう。
一方、最大多数の最大幸福…といった社会主義的な考え方、政治哲学が、むしろ独裁や覇権主義を生んでしまっているということは、何ともいえない矛盾をはらんでいます。
我々は、こうした政治的な動静を注視しつつ、もっと根源的で基本となる経済状況を肌感覚として理解しておくことが大切です。
例えば、経済学における「景気循環」です。ここでは、キチン循環(40ヵ月、在庫循環)、ジュグラー循環(10年、設備投資循環)、クズネッツ循環(約20年、建設循環)、コンドラチェフ循環(約50年、技術革新循環)といったことが指摘されています。
こうした景気循環、複合的な景気状況がどういった過程にあるのかということは、新聞を読み感じ、経営計画策定において意識しておくべきことです。
さらにもっと大切なのは、経営における「ブーム・アンド・バーストサイクル」の存在です。
ブーム・アンド・バースト・サイクル(Boom and Bust Cycle)とは、端的に好況と不況が交互に繰り返されてしまう景気循環のことです。
商売は需要と供給で成り立っていますが、そうした需要も供給も不確実なことです。このため、需要と供給のタイミングに常に“遅れ(Delay)”が生じることで、端的な供給過剰、供給不足が起こってしまうというシステム論です。
例えば、みなさまの周りで、突然湧いたように出てきたかと思えば、あっという間に消えていった商売のことです。
確かに賑やかで楽しいことではあるのですが、経営において消えていった…ということの実態は、とても言葉では言い表しきれない大変なことです。
当然のことながら、経営は伸びている市場、局面を狙っていくことも大切です。ですが、そうした他力な波に乗ってしまうということは、反面、自分たちではどうしようもない…ということでもあります。
そうであるならば、こうした景気循環やブーム…といったことのド真ん中を堅実に歩もうとする経営意識が、長期的な存在可能性を高めます。
そしてもっと大切なことは、世の中にどんなブームが起こっているかよりも、自社ド真ん中を歩こうとするか…ということです。これは、世の中の変化といったことよりもむしろ自社の意志であり、これこそが「ド真ん中」意識の神髄です。
毎日、新聞を読むことも大切ですが、そうしたインプットを通じて自らの「ド真ん中意識」を養っていくことが大切です。
正解の無い経営の世界、だからこそ目指すべき自らのド真ん中意識を形成していくことが欠かせません。他社が儲かっていることを、取りこぼしや損などと思わないことです。
世の中の変化やトレンドに対応していくことは短期戦略、自らの目指すべきところに向かってド真ん中を歩もうとするのが長期戦略。長期戦略があるから、結果、良いも悪いも引き受けながら、存続していくことができることにつながります。
ブームに乗ったつもりでバースト(破滅)に向かっていませんか?
世のブームよりも、自社基準、ド真ん中を歩き続けようとしていますか?