【第537話】ファンマーケティングの罠~ビジネスを成功させる立ち位置の原理~

「新商品の販売を伸ばしたくてセミナーを受けてきました。そこでファンづくりが大切、顧客をファン化してファンと共にビジネスを成長させる…ということで、そのためのコミュニティ運営に頑張ってきたのですが…」と社長。

 

最初にコミュニティに加わって下さった顧客方も離れ始め、販売促進どころか、コミュニティ運営費の捻出も厳しくなってきました。もう諦めないといけないのか、何をどこから間違ったのか…。その表情にはやりどころのない悔しさがにじみます。

 

まず、こうした経営者向けセミナーや勉強会、あるいは新たに提唱されて話題の理論といったものは、大抵の場合、しっかりとした実績や根拠があるものです。ですから、その意味でこれらの理論というのは、大抵…正しいのです。

 

ところが、正しいはずの理論を用いたにも関わらず望む結果につながらない…といったことが往々にして起こります。

 

なぜそうしたことが起こってしまうかといえば、突き詰めると一つの原因に収束していくことが分かります。

 

それは、「ビジネス上の立ち位置」です。立ち位置…???となったでしょうか。今から詳しく説明していきたいと思います。

 

まず、ここで立ち位置を考える上で大切な登場人物を紹介します。それは、「自社・顧客・社会」です。

 

ビジネスを語ろうとする際、これらの関係をどう置いて語るべき場面なのか…、それをしっかりと設定した上でメッセージを組み立てなければなりません。

 

例えば、経営者向けに自社紹介のプレゼンをするのであれば、自社を主役に置きつつ、商品サービスの特徴や社会的意義、顧客への貢献といった文脈〔自社-社会-顧客〕が設定されることになるでしょう。

 

あるいは、銀行向けに事業計画をプレゼンするのであれば、自社を主体者としつつ、商品サービスがどういった顧客に受け入れられ、それが延いては社会のため、〔自社-顧客-社会〕といった設定です。

 

そして、顧客向けの営業プレゼンであれば、自社の商品サービスの特徴を顧客のメリットベネフィットで説明し、それを社会的意義で補完、最後に自社がそうした取組みをするに相応しい存在であることの自己紹介、〔顧客-社会-自社〕といった流れになることでしょう。

 

あるいは、これが行政機関向けの経営プレゼンの場合、社会課題から始まり、その解決に自社が取り組むと宣言し、あとは顧客が集まるかどうか、やってみないと分かりませんが…、〔社会-自社-顧客〕といった具合に、後が大変だろうな~というプレゼンを耳にすることもあります。

 

難しいのは、同じような商品サービスを説明しようとしても、このようにその場面によって、組み立て方が変わってくるということです。

 

これは組立て方であると同時に、そのビジネスにおいて何を真の目的として大切に考えているのか…ということでもあります。

 

こうした組立ての中で、最も大切なのは「自社」と「顧客」の関係です。念のため補足すれば、ここで「社会」がどうでも良いということではありません。それは経営者が真面な人であれば、その事業、ビジネスは常に「社会」に役に立つものだからです。

 

これまで長く話がそれましたが、ファンマーケティング、「自分たちが主役でお客様がファン」という立ち位置関係は、御社のビジネスに馴染みますか?とお聞きしています。

 

芸能やスポーツ、いわゆる“興行”の場合、タレントやチーム、選手といった演者側が主役で応援する側がファンという立ち位置に間違いはないでしょう。

 

ですが、“工業”の場合、お客様が使うモノを提供しているのですから、それを使う顧客が主役で我々がその道具を提供するサポーターという関係認識が大切です。

 

確かに、私はSONYのファン…といった共感もあろうかと思いますが、それはあくまでも商品思想への賛同であり、商品購入の理由としてはそれだけでは不十分ですし、この“ファン”の意味でファンクラブ会費を頂戴できないことは明らかでしょう。

 

御社のホームページ、自分たちの話をしてしまっていませんか?

お客様の声…で自社の商品サービスを説明できていますか?

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