【第524話】理念を“意識高いだけの理想”に終わらせないための実践法

「理念を創り直したので、あとは具体的なところに落とし込んでいくところですね」と。

 

こちらは歴史ある企業をこれから継いでいく予定の経営者、熱心に経営者勉強会に参加して自分で考えて新たな“理念”を創り上げられました。

 

当たり前ですが、経営上、最上位概念となる“理念”を更新したのですから、そこからブレイクダウンされる具体的な施策は、全てこの新たな理念の下で見直されていくことになります。

 

こちらの経営者、そのことを良くご理解されているので、「あとは具体的なところに落とし込んでいくところですね」という訳です。

 

そしてこの具体的なところ…として、新たな理念に従って、新分野進出、新商品の具体的な開発検討を始められています。

 

ここで理念とは、「物事がどうあるべきなのかに対する自社の基本的な考え方のこと」です。

 

この考え方というのが分かりにくいので、理念の構成要素として、将来像、使命感、行動規範という3つで整理するというのが間違いの少ない進め方として知られています。

 

ここで大切なのは、理念とは「自分たちの考え方」だということです。

 

そもそも、自分たちの考え方…を明確にするというのは、とても難しいことです。なぜ難しいかといえば、「こう在りたい」を考えようとすると、どうしても「そうなってくれたら嬉しい」が混ざってきてしまうからです。

 

ところが、ここで止まればまだ良いものの、「そうなってくれたら嬉しい」が「そうなってくれたら嬉しいですか?」と外からの賛同を求めるところまで行ってしまいがちです。

 

こうなるともはや、自分たち…を喪失してしまい、聞こえの良いだけの空虚な理念ができあがります。ところが昨今、大衆迎合のこうした理念を多々目にします。

 

ちなみに、「こうあったらいいなという状態のこと」は“理想”と呼ぶべきことです。

 

世の中がこうあったらいいな…、みんなを笑顔に、地域を元気に、日本を復興、世界を幸せに…といったことです。

 

言うまでもなく、こうした理想も大切なことです。ただし、これは単なる理想論であって、自分たちの考え方を現わしているとは言えないものです。

 

なぜ言えないかといえば、その理由は簡単です。自分たちに課すことの範囲を超えてしまっているからです。

 

今、理念のことを話しています。理念とは自分たちが拠り所にする考え方のことです。自分たちに課す、守るべき基準や規範のことです。

 

大切なことなのでもう少し補足すれば、自分たち…です。

 

経営においてこの理念の遂行は「目的」です。そのために事業が「手段」という、いわば目的手段の関係になっています。そして、その事業の遂行がまた目的になり、そのための実践策がまた手段になっています。

 

優れた経営計画は、理念を最上位の目的として、目的手段が具体的なレベルまでつながって落ちてきています。自分たちで実践するつもりなのですから当然のことです。

 

一方、理念が理想化してしまった経営は、必ずその目的手段の間が飛んでしまいます。それは当然です。自分たち…だけでできないからです。

 

よって、経営計画は、外部を巻き込んで、連携して、仲間を増やしながら…、やたら外部依存なものになってしまいます。

 

経営計画の成就は、外部の協力に拠る…。これでは経営を計画しているとは言えません。

 

ちなみに、理念が理想論と化した経営は、その理想が正義、正しいことをしていると考えてしまうため、歯止めが効かず暴走し、いずれ破滅を迎えます。

 

理念はまず自分たちに課していますか?

その理念という目的に対して手段はつながっていますか?

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