【第520話】経営者に大切なおカネに観念するための思考法

「いえいえ、儲けるつもりはないので…」と情熱あふれる若きベンチャー社長。

 

事業プレゼンをお聞きした後に、採算の見通しについて質問したところ、こうした返答がありました。

 

もちろん、こんな感じの返答が来るだろうな…と想定の上、あえて経営者としての意識を確認するために質問しています。

 

ここで彼の「儲けるつもりはない」の意識というのは、「ビル・ゲイツを目指しているのではない」という意味なのです。

 

つまり、「自分はビル・ゲイツになる可能性もあるが、それを目指さず、もっと社会、世の中のために働くつもりだ」という訳です。

 

私が聞いているのは、そうした壮大な資産形成のことではなくて、足元の資金繰りのことです。そして、若き可能性は、むしろビル・ゲイツを目指して欲しい…ということです。

 

昨今、理念だけが先行して社会性や存在意義で経営を語るケースが増えています。事業の経営が社会活動的だと言えばお分かりいただけるものと思います。

 

まず前提として、社会的に必要なことであればそれは税金でやるべきことです。事業の意義や意味を訴求して、その活動費を集めようとするのであれば、それは経営活動ではなくて募金活動と呼ぶべきことです。

 

当然のことながら、募金がいつまでも集まり続けることはなく、そうした経営はいずれ頓挫するということです。

 

つまり、存在意義を世に問うためにも、経営を存続させる“採算”づくりが不可欠です。

 

面白いことに、黒字、利益…に対して腰が引ける経営者がいらっしゃいます。採算トントン、あるいは、ちょっと赤字くらいが心地よいのです。

 

その理由としては、お客様から多く頂戴してしまったのではないかという心配がない、仕入れ先に妥当な支払いをしている、従業員にもしっかりと還元している証拠である、せっかくの利益から税金を持っていかれるのは納得いかない…といったことが挙げられます。

 

ところが、「節税」として語られがちな、採算トントン、ちょっと赤字…にはもっと根の深い意識が存在します。

 

それが何かといえば、おカネが怖い…のです。

 

実際、お手伝いさせていただいた企業で売上利益が伸び始めると、それにビビり始める…ということが起こります。

 

まずは、こうした気持ちを理解して存続発展に向けた心構えを整えなければなりません。こうした心情を理解するために大切な貢献が「社会性・公益性・公共性」です。

 

ここで社会性とは、事業(商品・サービス)そのもので、世の中に貢献することです。大切なのは、世の中への貢献は「お客様を通じて」しか成し得ないという点です。

 

御社がしっかりと社会性を発揮しようとするのならば、商品サービスを磨き上げ、お客様に応える意識が大切です。立派な理念は商品サービスに落とし込めて初めて社会性なのです。

 

つづいて公益性とは、適正利潤を確保してそれを適正配分することです。ここには納税による社会への利益還元も含まれます。

 

そして公共性とは、地域活動、文化活動、ボランティア活動など、事業の枠を超えて社会に貢献しようとすることです。

 

昨今、この公共性を社会性と混同し、公共性視点から事業の意義を語り、賛同や募金を集めて活動資金とするような経営をお見掛けしますが、それは間違いです。民間事業の経営者として一義的に努めなければならないのは「お客様」です。

 

そして最後に、本当はおカネを目的としているからそれがバレるのが怖いのです。おカネはこうした3つの貢献に関する“情報量”だと捉え、公明正大に稼ぐ意識が大切です。

 

事業の社会性を勘違いしていませんか?

おカネを怖がらず貢献の情報量と捉えてみませんか?

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