【第495話】経営に本質的な意味をもたらすお客様との関係性資産とは
「この対応の仕方、お客様との関係維持でとても大切なことだから…と、いくら言ってもなかなかその意味を分かってもらえないんですよね~」と社長。
こちらの経営者、この目に見えないことを培うために尽力し、これまで地に足を着けて堅実に経営を成長させてこられました。こうした部分、表から見ただけでは分からないところに、経営の本質的な意味が宿ります。
ですから、この部分というのは、ある意味、経営の生殺与奪に係ることで、これを踏み誤ると恐ろしいほどに残酷な未来が待っていることになってしまいます。
そういう意味で、成長路線を歩むというのは、新たな挑戦、進歩発展していくことでありつつも、大切なところを踏み外さないようにしながら前に進んでいかなければならないことです。
ところで、この令和時代、スマホ、webサイト、SNSが当然の生活ツールとなり、情報の発信も検索も隔世の感がある進歩の世界を生きています。
そうした中で感じる変化は、多くのSNSネイティブ世代は自己表現がとても上手くなっていることです。
ツールは使えてナンボですから自己表現が上手いことは、とても素晴らしいことです。一方、そうした個人の自己表現法をビジネスの世界にそのまま持ち込んでしまうことで、残念な結果に堕ちてしまう若き未来ある経営者が増えていることは悔しいことです。
かつて情報リテラシーといえば、情報端末の操作方法、活用方法といったことでした。しかし昨今は、情報漏洩、誤拡散防止、発信内容など利用上のルールやマナーにその焦点が移っています。
こうしたマナーがある意味でビジネス上の弊害を生んでいます。それは、批判的なモノの見方ができなくなってしまっていることです。
理解しておくべきことは、今の時代、簡単に手に入る情報というのは場毎のコンプライアンスやマナーが働いている表面的なものだということです。
大切な点なのでもう少し補足すれば、「本当のことはもう誰も言ってくれない」ということです。
テレビのグルメ番組では「うまっ」、「初めて」、「サイコ~」が連呼されています。それがコメントとしてのマナーだからです。それが嘘ではないにしても本心であるはずもないことは言うまでもありません。
こうした風潮、大衆的な情報発信を批判的に見ることができず、真に受けて踏み外してしまう経営者が増えています。踏み外すことの中で最も致命的な失敗が、良かれと思って実行した打ち手によって、お客様との関係性が図らずも変わってしまうことです。
ここでいうお客様との関係性とは、お客様に対してどういった貢献アプローチを採っているか…ということです。
例えば、専門性、距離感、上、下、横、品質、速さ、価格…、こうしたお客様との関係性の核になっている部分のことです。
新事業、新たな打ち手を展開するということは、良くも悪くもこうした既存のお客様との関係性に変化を与える可能性があります。
今の時代に良かれとされている自己表現、我々はこんな素晴らしいことをやっている…といった情報発信は、問題状況の下請けを意味するため、どんなに素晴らしい商品サービスであったとしても原価はおろか適正利潤での販売さえも困難にさせてしまうでしょう。
あるいは、今の時代に良しとされている耳障りの良い手法的な打ち手は、ビジネス視点で見た場合、お客様との関係性を悪化させるものが多いことにも注意が必要です。
お客様を支えるのがプロの仕事というものです。どのようにお客様をお支えするか…、こうした関係性が商品サービス以上に売上利益を決定づけていることをお忘れなく。
お客様との関係性について目指す姿を描いていますか?
次なる打ち手はお客様との関係性変化を考えた上で実行していますか?