【第468話】新事業が本物の新事業になっているための3条件
「以上、新事業について、順守すべき法令手続きなどの調査は終わっていまして、全てクリアできる見通しを得ています」と社長。
さすが技術力の高い企業だけあって、下調べに余念がありません。
ビジネスを進めるにあたって、こうした法令、条例、技術基準…といったことというのは順守すべき前提です。
ですから、新事業構築、新製品企画といった際、どうしても事前調査の際、こうしたことに意識が向きがちです。
では先行他社さんはどうかといえば、当然のことながら同じ前提をクリアしているから、先行企業として当該ビジネスを進められています。
ちょっと考えれば分かることですが、御社が考えているその新事業というのは、大抵の場合、後発だということです。
世の中には大抵のビジネスがあります。研究開発の世界でも、論文を検索すれば、既に何年も前に、同じような着想で研究がなされていたりするものです。
「新事業後発論」、このことに気付いていることは、新事業の企画に携わる者の謙虚さとして、とても大事なことです。
大切なことなので補足すれば、新事業というのはこうした先人達の知恵を超えていく取組みであって、悔しいながらある意味で常に“後発”だということです。
いかがでしょうか。このことに意識が及べば、法令等の手続きをクリアできることなど、大変であってもビジネスを進める上での単なる手続きであって、本質部分ではないことがお分かりいただけるものと思います。
御社にとって新事業なだけ…。これを新事業と呼んで、必要な手続きに対する見通しだけで「できる」と思ってしまったならば、それは後発組として負けを意味することは言うまでもありません。
この意味で、新事業が、御社にとって…だけであったならば成功はおぼつかないということです。
新事業とは、先人たちの知恵を超えていく挑戦なのです。この視点から、ビジネスの核となる部分、先人たちの知恵を調べて理解しておくことは、法令等の調査よりも大切なことといえるでしょう。
面白いことに、新事業という未知の世界を目指すと、その先の可能性といったことよりも、法令等といった実務的な部分に意識が向いてしまい、実行計画が、創意工夫を忘れた単なる実行計画になりがちです。
このため、新事業に取り組んでいくために欠かせない意識として、次のことをお伝えしています。
それは、「外へ、先へ、高みへ」ということです。
まず「外へ」というのは、新事業とは外部活動、お客様活動であって、社内、内部の管理で実現できるようなものではないということです。意識を外に向けることが大切です。
そして「先へ」というのは未来志向ともいうべきことです。今、できるできない…といったことではなくて、3年後までにできるようになって…といった未来の能力向上分を見込んでその達成に挑む意識が欠かせません。
続いて「高みへ」というのは、今よりも難易度の高いビジネスに挑戦する意思です。新事業が会社や従業員の未来を切り拓いていくためには、現業よりも高生産を目指していくことが欠かせません。
生産性を上げながら成長していく視点が重要であり、これこそが経営の本質的な成長であると知っておくことが大切です。
御社の新事業は先人達を超えていますか?
新事業推進プロジェクトが単なる手続きだけの行動計画に堕ちていませんか?