【第462話】新事業の成功確率を高める投資意識の持ち方

「そう言われてみれば、考えておくべきことですよね」と社長。新事業への意気込みは本気です。ですが、本気が先走りすぎて数字面での準備が足りていませんでした。

 

このため、何をお聞きしたかといえば、とてもシンプルな質問です。それは「このビジネスの勝算は?」です。

 

自社看板ビジネス、自社商品でビジネスを展開しようと目指すならば、商品開発が必要不可欠であることはいうまでもありません。

 

そして、その商品が売れて単年度で黒字化、中期的にその開発費を回収して初めて「新事業は成功した」と呼べることです。

 

ところで、ビジネスには型があります。「請負受託型ビジネス」と「企画開発型ビジネス」です。

 

請負受託型ビジネスとは、発注者であるお客様側が仕様を決め、達成能力があった上で価格で折り合って受注するタイプのビジネスです。

 

企画開発型ビジネスとは商品サービスを自社で開発しそれに価格を付けてから販売するタイプのビジネスです。

 

いわば、能力を商品サービスに転換してから販売するタイプのビジネスです。

 

当然のことながら、どちらの型が正しいかといったことではなくて、社長、経営者がどういった経営を目指すのか…という意志の問題です。

 

前述の社長、これまでいくつかの「請負受託型ビジネス」を展開されてきましたが、ここにきて初めて「企画開発型ビジネス」に手を着けられました。

 

そのため、開発投資、投資回収、回収期間…といった投資採算づくりのイメージが甘かったのです。

 

例えば、トヨタ自動車、ソニーといった企業の売上高に占める研究開発費の割合は概ね5%です。あるいは、先端的なIT企業の売上高研究開発費比率は15%にも上ります。

 

こうした高水準というのは、ITといった先端市場の熾烈な競争情況を現わしているということでしょう。

 

ですから、自ら望んでやっているとうよりも、競争に負けないためにはそれくらいやらないと負けてしまう…という、切羽詰まった極限的なリスクテイク水準と見ることができるでしょう。

 

正確なことは分からないまでも、自動車1台の開発費が1000億円と言われます。あるいは、家電製品の開発費が10億円と聞きます。

 

企画開発型ビジネス、自社看板のビジネスで勝負するとは、こういう先行投資の回収とそれを超えるリターンを生み出すことへの挑戦だと心得ておくことが大切です。

 

こうした話の延長線上で、御社の研究開発費はいかほどでしょうか?

 

この水準が、御社の経営の“自社看板度”と思っていただいて間違いありません。

 

特に設備投資のようにカタチあるものならばまだしも、研究開発費といった目に見えない競争力への投資というのは、リスクが高いことは言うまでもありません。

 

先行投資とは様々なスポーツで言うところの“タメ”のようなものです。ですから、タメが大きいほど大きなリターン、飛躍が期待できるものです。

 

請負受託型ビジネスの気分で、こんなことできます、こんな商品あります…と企画開発型ビジネスに参入したならば、成功確率は限りなく低いと理解しておくことが大切です。

 

競合他社は、リスク覚悟で先行投資を積んで、自社看板商品を磨き込んできているからです。

 

御社にとって新事業であっても、多くの場合、後発です。先行他社とは違う御社らしい道の開発に賭けてみる意識が大切です。

 

先行投資と回収リスクのバランス、勝算を計画していますか?

御社らしい新商品に磨き上げきるまで我慢しませんか?

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