【第456話】新事業を成功に導く価値創出の実務
「なんか、面白くなくなってきちゃったな~…と思ったらそういうことだったんですね」と社長。
新しい技術サービスの開発を情熱的に進めてきて、新サービスの骨格ができ上がり、現場スタッフとの打合せなど詳細を詰めていくところまできて「面白くなくなってきた」というのです。
実はこれ、本当に良くあることです。良くあることというよりもむしろ、プロジェクト終盤になって、ほとんど確実に起こる事象といっても過言ではありません。
いわば、新事業の成功に向けて超えていかなければならない壁、終盤に襲ってくる罠ともいえることなのです。
ですから、社長には「最初にお話したアレですよ」とお伝えすると、面白くなくなってしまった構造的な原因が分かり、再び情熱が湧きたちます。
新しいビジネスというものを市場面から見れば、大きく二つの市場に大別することができます。
それは、価値創出ビジネスと問題解決ビジネスです。価値創造ビジネスとは、新たな価値を創造して潜在的な需要を掘り起こすことを目指すビジネスです。そして、問題解決ビジネスとは、顕在化した問題を新たな手法で解決しようとすることを目指すビジネスです。
どちらが良い悪い…といったことはありませんが、顕在化した問題を対象にしたビジネスの場合、そのビジネスの起点が顕在化した“問題”であることから、新商品や新サービスが、自社起点ではなく市場起点になりがちです。
これはある意味、新たな需要創出を目指してきたはずが、顕在化した市場に迎合し始めてしまったことを意味します。
前述の社長も、現場スタッフと打合せする中で、「そんなサービス、売れるんでしょうか…」といった保守的な意見から、新サービスが顕在化した市場への迎合に丸められて、面白くなくなってしまったのです。
ビジネスがお客様活動だとすれば、ビジネスにおいて“新しい”とは「お客様が知らないこと」と言い換えることができます。
お客様が「新たな価値」を知らなかったのと、「問題解決の新たな方法」を知らなかったのでは、そもそもビジネスが対象とする市場が全く異なるということについて、理解しておくことが大切です。
本当の意味で、新たな価値の創出とは「もっと嬉しい」であって、「問題がない」ことではありません。
ちなみに、「ビジネスはお客様の問題解決」といったことを耳にします。これ自体、お客様に焦点が当たっているという点で正しいといえることです。
ただし、ここでいう「問題」というのは、より広い意味だということです。「顕在化した問題の新たな解決」に留まらず「まだ知らぬもっと嬉しい」まで含むことです。
当然のことながら、新サービスが「顕在化した問題の新たな解決」だとすれば、その新サービスが採用される理由は、これまでの解決法よりも安い…ということ以外にありません。
このため、折角の渾身の新サービスも、営業では客先から「価格」についての交渉が求められることは明らかです。
ですから、新サービスは「まだ知らぬもっと嬉しい」にまで磨き上げてから、お客様にご提示することが大切です。
新事業とは、どうせ賭けなのです。ですから、お客様が「まだ知らぬもっと嬉しい」に賭けてみることが大切です。
お客様の「まだ知らない」に挑戦する意識が大切です。販売初期には苦労を伴いますが、それこそが新市場の創出であり、御社らしい価値創出のアプローチなのです。
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