【第453話】経営を高める市場選択の賢い実務

「ねえ、〇〇さんは、レッドブル派、それともモンスター派?」、海の上でサーフィンの波待ち中、若い男性二人が、そんな話をしているのが聞こえてきました。

 

ちなみに、レッドブルとモンスターエナジーとは、いわゆるエナジードリンク。カフェイン、アルギニン、ビタミン…といった成分が含まれており、昭和チームの方であれば若者向けオロナミンCみたいな飲み物と聞けばお分かりいただけるでしょうか。

 

これらは、エナジードリンクの人気二大銘柄ですが、どっち派…というのがライフスタイルへのこだわり、自己表現の一つだったりします。

 

エナジードリンク…というカテゴリ、コンセプトはビジネスの視点から秀逸です。エナジーというのは決してカロリーということではなくて、これを飲むと元気になれる、発奮する、疲労回復…といったニュアンスから「エナジー」というカテゴリが設定されています。

 

そうしたドリンクですから、ドリンクに含まれる成分といったことよりも、むしろこれを飲むこと自体が頑張ろうとする意志表明の意味を持っていたりします。

 

ちなみに、とあるデータによると、顧客層はレッドブル派とモンスターエナジー派で、男女ともにほぼ半々、年代別でも概ね同様の傾向がありつつも若干の違いがあるようです。

 

レッドブルは20~30歳代、ビジネスで頑張って旅行とグルメ、お酒も楽しんて…といった快活な女性に。モンスターエナジーは、10代後半~20歳代、ゲームしたり漫画を読みながらポテチを食べて…といったインドア派の男性に人気…といったことです。

 

前置きが大変長くなりましたが、経営はどんな商品サービスを提供しているかと併せて、どんなお客様を対象としているのかが両輪となって定義されるものです。

 

これら商品も、甘さ、香り、成分、内容量、価格…といったところで秀逸に差別化が図られており、そうした違いから、顧客層、購入動機、心情に違いが生まれています。

 

マーケティングの教科書では、こうした新商品の市場性について、ニーズやウォンツという用語が説明されています。ニーズとは「喉が渇いた」、ウォンツとは「〇〇が飲みたい」ということであり、ニーズは目的、ウォンツは手段などと言われたりします。

 

ところが、新事業、新商品の企画開発にあたって「ニーズはあるのか?」という販売見通しへの質問がプロジェクトを迷走へと導くことになりがちです。

 

それは本来、ニーズを聞いているのではなくて、ウォンツを訪ねる質問なのです。ですから「どんなウォンツに応えるのか?」と聞くべきことなのです。

 

より具体的には「どんなお客様のどんな心情に、どんな新しい手段で応える新商品なのか」と確認すべきことだということです。

 

ニーズ…は「必要性」を聞いています。健康でありたい、長生きしたい、楽しみたい…とか、生産性を向上させたい、顧客サービスを充実させたい、営業効率を上げたい…。

 

そうしたいわゆるニーズというのは、もう相当の昔から分かっていることであり、それ自体を確認することは、ビジネスの新たな展開局面において意味を成しません。

 

そうした古からのニーズに対して、新たな実現法を提供することが、新たなビジネスだということです。

 

新事業、新商品の企画開発にあたっては、ニーズ、必要性といった市場そのものに焦点を当てるよりも、そうした古からの市場ニーズに、どのように新たな解決法で切り込んでいくのか…という視点で組み立てていくことが肝要です。

 

その意味で、より高付加価値なビジネス、順調な販売、独自路線の成長発展を目指していこうとするならば、必要性の高さよりも、フツーレベルの必要性にあらたな手段、実現法を提供していくことの方が大切だということはお分かりいただけるものと思います。

 

社会変化、技術革新、価値観の多様化で、こうした新たなニーズが生まれている…といった言い回しは、一見、賢そうに聞こえますが、それはニーズではなくウォンツ、目的ではなく手段のことを語っているという認識が大切です。

 

お客様の古くからのニーズに新たなウォンツで応えようとしていますか?

ニーズ市場ではなくウォンツ市場で勝負していますか?

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