【第442話】誇りを持って〇〇屋だと叫びませんか?
「創業当時からウチは〇〇屋なので…」と社長。新事業への挑戦にあたっても、何でも良い訳ではなくて軸をお持ちです。
こうした〇〇屋…というような自負は、世の中にあってどんな役割を担っているのかという宣言であり、経営者として誇りある素晴らしいことと思います。
ところが、ここ10年ほどのことでしょうか。世の中的には、こうした〇〇屋、本屋、八百屋、薬屋…といった表現が使われなくなりました。
これは、メディア、マスコミが差別的として禁止用語に定めたことに拠ります。実際、書き物の中にこうした「〇〇屋」という表現を使うと、編集者さんからは、赤ペンが入って戻ってきます。
しかし、〇〇屋という表現は、経営の意識を表現するものとして、どうしても必要なものに思えます。
これは、経営者としての意志の現れであり、自分たちが何者であるのかということを現す大切な言葉だからです。
ところで、20年ほど前から、経営の世界では「業種の業態化」ということが言われてきました。ここで、業種とは、いわゆる〇〇屋のことであり、業態とは、コンビニエンスストア、ディスカウントストア、ホームセンター…、提供方法、売り方による分類です。
もう少し補足すれば、「業態化」とは、商品サービスに留まらず、その提供方法や販売方式などでも、差別化を図っていきましょうという戦略策定のテーマ的なものでした。
つまり、〇〇屋という商品サービスに留まらず、提供方法、販売方式まで、売りモノの概念を広げて、より広いお客様に応えていくことが大切です…というメッセージでした。
ところが、こうした業態化メッセージは、概ね間違った解釈がなされてきてしまいました。
その結果、商品サービスはさて置き、提供方法や販売方式だけで商売を組立てようとする風潮がまん延してしまいました。
このため、ウチのおでんスープは豆乳なんです…みたいな間違った商品企画、事業開発が頻繁に起こってしまっています。
ちなみに、経営において成長を目指そうとするならば、商品サービスの取り扱い範囲を拡げつつ、より広いお客様に応えていくことが必要になることは言うまでもありません。
こうしたことを企画していく上で大切なのは「誰に、何を、どのように…」ということです。
これは、いわゆる事業領域の定義です。生存領域という意味で事業ドメインと呼ばれることもあります。
よって、「誰に、何を、どのように…」をより広げていこうとするのが成長戦略策定の中身だということです。
ところが、「何を」や「誰に」をさておいて「どのように」から考えてしまうと、どうしても商売が小手先になりがちです。
商売はお客様活動です。ですから「誰に」を考えることが大切であることは言うまでもありません。ただし、売りモノの本丸である「何を」が欠けてしまっては商売に筋の通った成長戦略が描けるはずがないのです。
得意な「何を」を「どのように」まで広く考えることで、より広い「誰に」に応えていくことを考えるというのが業態化の正しい進め方です。
事業ドメインを拡大していこうとする際の失敗は、「何を」という起点を持たずに「誰に」「どのように」だけで考えてしまうことに起因します。
「私たちの仕事はみんなを笑顔にすることです」といった宣言に「何を」が欠けていることはお分かりいただけるものと思います。
まずは、自分たちが何屋なのか、何者なのか…軸となる〇〇屋を叫ぶ意識が大切です。
業態、提供方法だけで商売の違いを叫ぼうとしていませんか?
今一度、〇〇屋だと叫んでみませんか?