【第384話】ビジネスに繁盛と長寿をもたらすキーコンセプトの生み出し方
「新しいのに売れない…、コンセプトの間違い、仰っている理由がやっと分かりました。」
ビジネスがお客様に受け入れられるためには、差別化、違い、優位性…といった新たな切り口を生み出していくことが欠かせません。
同時に、現実に長寿なビジネスが存在しているという観点から見れば、単に“新しい”ということだけが、存続発展、延いては長寿なビジネスの要因ではないことも分かります。
例えば、新しいとは真逆である老舗、歴史、永い…といったことが差別化になっていたりするということはお感じいただけるものと思います。
つまり、差別化、違い、優位性…といったこと自体にもいくつかの種類があって、その種類が商売の長寿と短命を分かつ要因となっています。
こうした意味で、ビジネスにおける“新しい”とは、単に時代的に新しいということではなくて、思想的に“新しい”という新機軸が必要不可欠なのです。
こうしたビジネスの軸となる思想部分を「コンセプト」と呼び、商品サービス、商売の違いを表現するために重要な事業要素を成しています。
このコンセプトの部分が弱いと、考えてない、煮込み不足、新しくない…ということで、世の中からフツーと見なされスルーされることになってしまいます。
ただし、大切なことは、長寿なビジネスを立ち上げようとするならば、このスルーを避けようとするばかりに、単に奇抜なコンセプトを設定すれば良いというものでもないということです。
長寿にはコンセプトの種類として入口があり、その入り口を間違えば、願う長寿は叶わないのです。
ところで、コンセプトとは、そのままならば“概念”という意味です。概念ですから、この言葉自体は意味を持っていません。コンセプトという言葉は“空(カラ)”なのです。
したがって、ビジネスとして新たなコンセプトを生み出そうということは、この“空”を自分の考え方で埋めることに他なりません。
大切なことなので補足すれば、ビジネスにおいてコンセプトとは有無ではなくて、その概念としての新しさを生む思考的な努力だということです。
概念が新しい…例えば、「焼き芋焼酎」という新たな商品は、芋焼酎にフレーバーの違いという新たな価値軸を生み出しているという意味で新しいコンセプトといえます。
一方、仮に「蒸留しない芋焼酎」という奇抜なコンセプトの場合、蒸留酒である焼酎という定義からも外れてしまっているため、もはや焼酎とは呼べません。
これを焼酎とは違う別な「芋酒」とするならば、新しいコンセプトと言えますが、誰も芋酒の飲み方を知らないためビジネスとしては苦戦することが容易に予想されます。それは新ジャンルではなくて別ジャンルだからです。
こうした経験則的な理解から、新たなビジネスとして強いコンセプトを考えようとするならば、今ある概念を発展させていくことに尽きるということです。
奇抜なコンセプトが“新しい”を越えて“違う”になってしまうと、コンセプトがゼロからの積み上げになってしまうため、「新しいけど売れない」が起こり得ます。
優れたコンセプトとは、今知られている概念を更新していくことで生まれます。これは、新しいといえどもゼロから生み出そうとするものではなくて、既に知られている「こういうもんだ」を「なるほど」と新たな思考軸で更新していくということです。
こうして、新しいコンセプトを最初に生み出した企業にはパイオニア企業としての名誉が与えられ、その認知で時間と共に強さが積み上がっていきます。
優れたコンセプトとは、これまでに無いとか他社とは違う奇抜性にあるのではなくて、既に知られた概念を自分たちで考えた新たな価値軸で更新したもです。
これこそが、存続発展の鍵となる“キーコンセプト”、長寿ビジネスの核なのです。
キーコンセプトは新たな価値軸のご提案になっていますか?
「こういうもん」の先に長寿ビジネスを目指しませんか?