【第347話】魂が奮い立つ成長投資の絶対条件
「この工場増設に賭けてみようと考えていまして…」という社長のプランは壮大です。こちらの〇代目社長、見た目が何ともファッショナブル。それはある意味どうでもいいことなのですが、経験上、ここから類推されることに懸念が生じます。
その懸念とは…、どう見えるのかに意識が向いていることです。言うまでもなく、商売上、外側からどう見えるかということはとても大切なことです。
だからこそ、そのどう見えるのかに応える中身が重要です。もう少し補足すれば、どのように応えるつもりがあるのかという経営者としての意志の強さの程度といえることです。
実際、見た目を買って注目を集めれば仕事につながる…といった、いわば設備投資が広告になる的なお考えの節がありましたので、少し質問をさせていただきました。
それは、この工場増設で「何が作れるようになりますか」、「それによってどんなお客様に応えることができますか」というものです。
まず先にお伝えしておきたいのは、常々「経営は投資である」ということです。よって、こういった工場増設といったご相談は大好物であり、是非とも実現させていただきたいと考えています。
一方で、経営が投資である以上、そのリターンが構想されていない投資には懸念の意を表明せざるを得ない立場でもあります。
経営者にとっておカネを使うとは、種まきです。よって、その種がどのような果実を目指したものなのかという構想のカラフルさが投資に成功をもたらします。
大切なことなのでもう少し補足すれば、その設備投資が社長の買い物のワクワク感程度であったとするならば、それは投資ではなくて消費に過ぎないということです。
なぜ、こういった表面的な投資が行われがちなのかということを深堀すれば、そこには共通する原因が見えてきます。
それは、社長の魂が退屈だから…です。今の仕事、今の状況に興奮していないのです。よって、それを見た目程度のカタチで補おうとしてしまうのです。もっと言えば、退屈さを埋め合わせするようなものを「買ってこよう」としているのです。
魂が退屈な状況を埋めようとする意識から、それを埋めるために新たなリスクを取ろうとすることほど、経営の問題を増幅させてしまう行為はありません。
これは実に単純な話です。設備とは経営者の想いを増幅する装置に他ならないからです。
そのことに気付けば、この工場増設は待った…となることは自ずとお分かりいただけるものと思います。
まずは今のスケールで魂が奮い立つ仕事に挑戦することが先決であり、その先にその増幅に向けた設備投資が続くべきものです。
言うまでもなく、本物の成長とはおカネで結果を買うことのできないものです。買うことができるのは、そのための道具までであって、その道具を使った結果については、そこからの努力次第であることは言うまでもありません。
いいゴルフクラブに買い替えるのはベストスコアを更新するための投資ですが、新しいクラブを買うことがベストスコア更新を約束するものではないということに説明は不要でしょう。
ここで、事業経営における投資とは、宝くじのようなものではないともいえるでしょう。買っただけで後は結果を待つだけ…ではないのです。そこからが新たなスタートであり、これまで以上にアクセルを踏む覚悟を伴うものです。
成長投資にあたっては、投資の目標設定がリターンの構想になっているかをチェックすることが大切です。そして、その目標設定が、おカネを使うことで手に入れられる範囲に留まらず、その先にある努力目標、挑戦目標になっていることが重要です。
この際、「らしくない」という経営者としての自由さの表現の先に成功はありません。自社「らしさ」を表現することに徹し、自社らしさを育て、その先にあるNo.1を目指していく意識が大切です。
今の仕事に魂が荒ぶっていますか?
投資はその先にあるリターンへの挑戦になっていますか?