【第319話】こだわりを創意工夫に高めて強い商売にする。
「この新商品は…」と若いながらも優秀とみえる営業マン。新しい除菌・脱臭機について、機能、初期費用ゼロ、月額レンタルで導入できることをシンプルながら良くできたパンフレットに沿ってご説明くださいます。
魅力的なご提案ではあったのですが、弊社としてのニーズが低く今回は導入に至らずとなりましたが、仕事柄、お節介にも一言申し添えてしまいました。
それは、「創り手の意志、こだわりが見えない」ということです。
今の時代、高度に分業が進んでおり、何らかの新商品を造ろうとすれば、すべて外注、OEMといったことで進めることが可能です。
これは逆から見れば、その新商品を創るにあたって、核となるこだわり、創り手の意志、企画の肝…といったことが創り手側に不足していたならば、せっかくの新商品は、人の意志のこもっていない商品、部品の組み合わせ、単なる物質に成り下がってしまいます。
当然のことながら、どんな商売も「こだわってない」ことなどありません。ただし、そのこだわりにも階層レベルがあって、そのことに気付かれていないことが圧倒的に多いということをお伝えしています。
例えば、とんかつ屋さん。「〇〇ブランド豚使用」、「低温調理」、「ご飯キャベツおかわり無料」といったことをこだわりとしてご説明される場合があります。
確かに、考えてはいらっしゃるのですが、この考えることの階層は、材料、調理法、提供方法…といったことを単に「選んだ」というレベルに過ぎないということです。
ちなみに、こういった選択レベルのことを、こだわりだとして強めに発信していたとするならば、お客様からすれば、「他にもある」となってしまいます。
このため、こういった経営にあって次なる打ち手は、必ずと言っていいほどに「他でやってない」、「ここら辺にない」、しまいには「面白いと思って」といったことで奇策になってしまうのです。
一方、商売を強く永く持たせている場合、こだわりの中身は必ず強い「意志」になっています。経営が「やり方」の選択レベルではなくて、「考え方」の意志レベルで成り立っています。
再び、とんかつ屋さんで例えるならば、「和食王道のとんかつ」、「衣と肉の食感コントラスト」、「食べ応えと軽さの探求」といったことです。
こういった意志に基づいて、材料、調理法、提供方法…といったことが選択されて、商売の全体を成しているということです。
このとおり、創り手の思想、意志とはこういったことです。目指すイメージが頭の中にあって、それ自体を本人が目指すと同時に、そのことをお客様に認めていただく。そのことに諦めずに取り組み続けることに“こだわっている”といえます。
ちょっと考えれば分かることですが、創意工夫の領域とは、手段の選択といったことを超えたところにあります。
もちろん言うまでもなく、やり方レベルの工夫も大切です。ただし、経営の意識がそのレベルに留まっていたならば、経営は、他で実績あるやり方のコピペ、劣っていることへのコンプレックス、みんなと同じお勉強のレールをいつまで経っても卒業できないのではありませんか…とお伝えしています。
経営における創意工夫とは、「考え方」の領域にあります。これは、経営者ご自身、自分でしか考えられないということでもあります。
そしてこのことは極めて大切なことを意味しています。これこそが「独自性」の領域だということです。事業経営における独自性とは、経営者の意志、意識、考え方によるものです。単なる違いとは一線を画すものです。
不思議なことに、この独自性は、モノ、ヒト、延いてはカネにまで独自色というパワーを宿してくれます。商売を強く永く…創意工夫が独自性になる意志の領域で考えることが大切です。
御社の創意工夫は、「選んだ」に留まっていませんか?
創意工夫が意志となり独自性を放っていますか?